005 検査

 昼食の後に教室に戻ってくると、何やら巨大な装置があった。何だこれ?

「随分と早かったですね。ナイトメア首席」

「呼び捨てでいいです。いちいちそんな呼ばれ方では面倒ですから」

「そうですか。ゼクティス次席も同じくですか?」

「はい。そのように願います」

「わかりました。それよりほかの方々は?」

「まだ食べて……いえ、騒いでいます」

 ゼクティスが応える。そんなことより……

「ルアナ先生、これは?」

「ああ、説明がまだでしたね。この装置は魔力測定器です。これから、生徒たちにどれほどの魔力量マナキャパシティがあるのかを、そして、各々の源素オリジンの傾向を見ます」

「なるほど。まず現時点での我々のレベルを測ると」

「そういうことです。皆さんが戻ってきてから行いますから、席に座って待っていてください」

 そうは言われても、目の前でこれから教えを乞う人が忙しくしてるとなぁ。

 ゼクティスが言った。

「手伝わせてください。先生が忙しく動いているのを黙って見ていることはできません」

「いえ、すぐに終わりますから大丈夫です」

「いいえ。あなたは私の先生なのです。生徒が先生を手伝うのは当然の義務です」

「……わかりました。そこまで言うのならお言葉に甘えましょう」

 ゼクティスの押しにルアナ先生は折れた。

「では、そこのコードをここにつないで……」

 3人でやるとあっという間に終わった。ちょうど騒いでいた連中も帰ってくる。

「あっ、ごめんなさい先生、遅れちゃいました」

 舌を出しそう言うのはシルフィア。明るいのはいいがその態度は大丈夫だろうか。

「いえ、遅刻はしていませんから。皆さんも座ってください。これから少し説明をします。お二人とも、手伝ってくださりありがとうございます」

 そう言ってルアナはこの装置とこれから行う検査の概要を説明する。ナイトメアとゼクティスは軽く会釈して席に戻った。

 基本的には中に入って数秒待てばいいだけなので、どうということはないらしいが。

「では、ささっとやってしまいましょう。学籍順に並んで待っていてください」

 指示に従い、列を作って順に検査をする。特に問題もなく、すぐに終わるかと思ったが……ゼクティスの番になって、列が進まなくなった。ルアナ先生が渋い顔をしている。何があったのか。

「何かあったのか?先生」と聞いたのはタイタンだった。

「いえ……少しエラーが出たかと思います。ゼクティス、もう一度やり直していただけますか?」

「はい、わかりました……?」

 もう一度ゼクティスが中に入り、魔力マナ測定によくみられる光が彼女の体を駆け抜ける。しかし、ルアナは眉間にしわを寄せたままだ。

「なぜ……? エラーではないということなの……?」

「どうかしたんですか?検査結果に異常でも……」

「……いえ、何でもありません。次はナイトメアですね」

「はあ……、わかりました。お願いします」

 絶対なんかあったと思うけど、自分にはわからない。とりあえずスルーしておいた。

 その後、全員の検査が終わり、本日は終了。寮へ行くことになったが、ルアナの顔は険しさを増していた。

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