004 昼食

 とりあえず、教室に帰ってきた。建設費に関しては気にすると胃に悪いということがわかった。あとこの学院の学校長は何考えているのかわからないこともわかった。

「今から昼食とします。先ほどご案内した食堂で昼食をとってください。私はその間、少し準備をしています」

 昼食か。腹はあまり減っていない。まあ教室に残って……

「ナイトメアさん、一緒に食べようよ!」

 そうなる気はしてた。

「そうだな。じゃあ行きますか」

 行くだけ行ってみよう。メニューを見ておいても損はないだろう。食べる気はないけどコミュニケーションを取るのも大事だ。父さんが言ってた。


「混みすぎだろ」

「そうね……」

 学院に来る時のあの道に勝るとも劣らない混み方だ。

 ――席を先にとったほうがいいな。【テレポーテーション】で確保。

「……え?」

 ん? ゼクティスさん、巻き込んだだけですよ。何を驚いてるんだい?

「……、まさかあなた……もう二重唱を習得して……?」

「ああ、そうだけど……みんなヤベェヤベェ言うけど簡単だぞ」

「いや、私も使えるけど……同年代の〈人族ヒューマニティ〉にいるんだ、これできる人」

「まあ、最近は〈魔族マジシャン〉の専売特許になりつつはあるよなぁ」

 やろうと思えば一ヶ月あればできるんだが、みんなやろうとしない。できなくても日常では困らないからだ。

 俺は事情があって習得した。

「なんかショックね……。密かな自慢だったんだけどなぁ」

「どうせ三重唱ぐらいできるんじゃないのか」

「できないの。とっかかりは掴めてるけど……話しててもしょうがないね、なんか取ってこよう?」

「そうだな、残っとくから見てきなよ」

「ありがとう。お言葉に甘えるわ」

 楽しそうに見に行った。なんか結局腹も減ってきたな。あとで少しだけ取ってこよう。


 十分後……

「その程度で足りるのかお前」

「あなたに言われたくないですー。マフィン一個じゃ絶対お腹空くって」

「俺は朝食が遅かったからいいんだ。お前だってスコーン一個しか食ってないじゃんか」

「私はいいの! 女子だし」

 なんだその理由。まあいいや。ブラックコーヒーを一口。

 ――うますぎるっ! どこの豆使ってるんだ?

 食堂のメニューはやばかった。高級料理もある。庶民の味ってやつもあるが厳選素材だ。絶対うまい。

「んっ? このレモンティー……?」

 だよね、おかしいよねこの学院。どこに金使ってるんだよ。生徒への待遇良さすぎるでしょう!

 食後のコーヒーと紅茶を楽しむ。すると声をかけられる。

「お前がナイトメアか?」

 ――背後を取られっ……

 落ち着け。さっきも同じことがあった気がするが。背後を取るのが流行っているのか?

「ああ、そうだけど。君は確か同じクラスの」

「フレアだ。よろしくな。首席だってな!」

 赤髪が特徴的な男子だ。なんか血の気が多そう。〈獣人ビースト〉の〈狼種ウルフ〉だ。

「不本意だけどね」

「よく言うぜ、過去最高成績がヨォ。お前、戦闘もピカイチなんだろ? 今度俺と戦ってくれよな! 次席さんもよぉ!」

 多かったよ。

「本気で言ってる? むやみに剣は振りたくないんだが……」

「初対面でこんなこと言われたのは初めてだわ」

「今度っつてんだろ。機会がありゃでいいんだよ」

「まったくもぉ!初対面で決闘ふらないの!」

 違う子が来た。緑のショートヘアで幼げな女子だ。名前はシルフィアと言ったかな? 見たところ〈妖精フェアリー〉だ。

「ごめんね、急にこんなのが来たらびっくりするよね」

「いや、幸か不幸か慣れてる。シルフィアさんと二人で何かご用で?」

「さんはやだぁ、呼び捨てでいいよー!用はないけど、まあ仲良くしてねーってこと!首席と次席さんに媚び売っとくんだー!」

「言っちゃダメでしょそういうのは。まあよろしく」

「よろしくね、シルフィア」

「楽しいことに興じているな、私も混ぜてくれ」

また違うのが来た。茶髪の小柄な男子。なんか口調が威厳たっぷりなんだが。この人も〈妖精〉だが、シルフィアは〈森精種エルフ〉に対して、この人……タイタンは〈土精種ドワーフ〉だ。

一部の種族は種族内の民族のようなものもある。〈妖精〉〈獣人〉はそんな種族だ。

「タイタンさんも媚び売りに来たのか?」

「そんなつもりはない。賑やかだったのでな、少し寄ってみたのだ。よろしく頼むよ」

「わたしも……よろしく……」

青髮の女子も来た。暗そう……。〈獣人〉の〈猫種キャット〉だ。

「セイレーンも……仲良く……したい……」

「う、うん、心配するな? 仲間外れにしたりはしないから、な?」

「……うん……」

なんか一気に友達が増えたな。まあ悪いことではないし、楽しく過ごせればそれでいいからな。

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