002 王立学院
王立宮廷付属学院は、高学部と大学部が合わさった一貫校だ。文武どちらもアストラディア同盟連合国トップクラスの基準を誇る学院である。珍しく、高学部の時点からいくつかの学問コースがある。ナイトメアは戦術コース。字の如く、戦いを専門に学ぶ。
アストラディア同盟連合国にも触れておこう。この国は、「名前が長えんだよ」ってことで連合王国と呼ばれる――むしろそうとしか呼ばれない――。この国はかつてラリア大陸にあった国々が、〈
しかし、全種族がこうして平和を築いているわけではない。ラリアと並んで「二大大陸」と呼ばれるもう片方、ノルトア大陸に存在する〈
時は学院、ナイトメアに戻る。
学院は首都の中で王城を除いて最も大きな建物だ。
いくつか並び立つ純白の校舎は王都の中でも特に目を引き、中でもそこからそびえる高き時計塔は王都の時間を司っているほどだ。敷地も広く、正直王城にも匹敵するかもしれない。まあ、さっきも言ったが高学部大学部ともに同じ敷地にあるため、無理もないかもしれないが。とはいえ中庭がバカ広い気もするが。
校舎案内を配っていた。とりあえずこれを見て教室を目指さねばならないわけか。
「えっと……? どこだ……?」
ごめん、広すぎてわかんない。
案内図上の教室を見つけるのに五分かかった。
そこから辿り着くのに十分かかった。迷ったのではない。広いんだ。
教室のドアを開け中に入ると、すでに生徒たちはかなりいた。談笑している者、読書にふける者、寝ている者…………寝てるっ!?早いな気が抜けるのっ。
ま、まあいい、個人の自由だ。
そう言い聞かせ、ナイトメアは教室奥の席に着き、することもないので、とある魔導書のページをめくり始めた。読んでいるように見えるが、実際は読んでいなかった。
そうして何分か過ぎて……。
「難しいものを読むんですね」
と、後ろから声をかけられた。が、
—―背後を取られたッ!?
戦術勘が働いてしまい、バッと勢いよく振り向いてしまった。
「わっ! お、驚かしてしまいましたか……?」
「あ、ああ、すまない。つい……」
声を掛けただけでこんな反応をされたら困るだろう。
「い、いえ! 突然声を掛けた私が悪いんです……」
そこにいたのは少女だった。
透き通った肌、輝くような白い髪、湛える瞳は黄金。世が世ならば国をも傾かせたであろう美少女だ。
「いや、俺の反応も大げさだったな。悪い」
「いえ、そんな……」
健気な性格のようだった。ナイトメアは話を変えた。
「俺に何か用か?」
「あ、あの……お隣の席いいですか?」
「ああ、どうぞどうぞ」
そんなことか。自由にしてくれればいいのに。礼儀いいなあ。
「私はゼクティスといいます。よろしくお願いしますね?」
「俺はナイトメア。よろしくな、ゼクティス」
こうして、ナイトメアは彼女と出会った。
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