第5話
仮眠室のドアを開けるとそこも霊障が深く薄い闇に染まっていた。今度こそ、白鶴が一気に片付けると、狭い部屋の中に見慣れた赤い袱紗を見つける。
「それ、うちの紋入りの袱紗ですね。どうしてここに・・・」
「そうなんや。これに包んで持って帰って来たのが昨日のことや。今朝から紫竹、品物の整理をしてたやろ。さっき在庫の確認したが、入ってなかった。宮田ちゅうのが、持って帰ったんやろ。篭目の護符が効いてたから辛うじて霊気だけが漏れ出てそれが残ってたんやろが・・・今は、そいつが体に入っているやろ」
白鶴は、紫竹と話ながら、紅い袱紗を両手で包み念を送ってひらげて見せると一羽の丹頂鶴がはねを広げてそこにいた。
「仕事や、あの物のを始末しに行き」
丹頂は、一声高く鳴くと翼を広げて飛び去った。紫竹は、縋るように白鶴を見つめると
「やはり俺のしくじりですね。気が付きませんでした。すいません」
「今は、そんな事やないやろ。急いで追尾をかけなあかんで。残念やがあの式では相手にならん」
紫竹は頷くと、手袋をはめてPCを取り出す。画面の前で印を結んで九字を唱えると画面がぼっと明るくなって紅いポイントが動き回る。
「これは、俺にはでけへん。おもろい事考えたな」
紫竹は、今度は動じないただ画面を見つめてじっとしている。白鶴の携帯に
宮田の住所が送られてくる。
「紫竹、自宅の住所が来たが・・・」
紫竹は、住所を一瞥すると、首を振る。
「それやないです。式は、目的の所に着きましたが、ここの近くです。場所は、読めました。直ぐにいきますか」
「ああ、行こか」
二人して向かおうとした所に、先程の山本が走って来た。
「すいません。さっき宮田の彼女のこと聞かれたんですけど・・・あいつ、彼女も付き合ってた子もいないんです。でも、好きな子はいました。片思いで、必死で口説いてました。女の子の方は何とも思ってなくって、それでも色々お願い事されてたみたいで、タレントにサイン貰ったり、流行りものプレゼントしたりで・・・その子、この近くのカフェのバイトで、これがその子の名前と店の住所です。・・・役にたちますか。宮田って嫌な奴なんですけど、何だかんだ言っても同期なんです。よろしくお願いします」
「ああ、役に立つで・・・あとは、まかしとき」
白鶴が、優しく笑って答えていると、住所の書かれたメモを受け取った紫竹が一言、呟いた。
「大当たりです」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます