第2話 これだけは
私が、夢想芸術家カリスマシェフ〜澤村 和樹と逢えたのは奇跡かぁ?それとも、偶然、必然なのか?夢なのか?幻なのか?私は未だに理解が出来ない。ただ言える事は涙が止まらなかった事を思い出す。
川上 宗男(52)は明応大学を卒業して、都内の商社で働いている。
主に、アジアの各国を周り、鉄道とアンテナ供給が仕事だぁ…先月は台湾で特急の受注を商社で一括納品を得る事が出来た。
しかし、台湾にいた歳月はあまりに長く女房は別居している。
息子の義雄(22)は慶治大学に入ったが、遊び過ぎて大学は留年してしまった。
どうにかして、系列の銀行に採用出来るとは思ったが厳しくなってしまった。
まぁ、悪い事は続き、母親の節(80)がアルツハイマー型認知症になってしまった。
もともと、細かい性格で潔癖症な上に父親の将彦が石油運輸船の船長をしていた事もあり、半年以上帰って来ない事があり、父親のような存在であった。
たまに、明治生まれで海軍上がりの為、将彦が帰ってくると三指立てて、正座して待つのが習慣であった。
とはいえ、母親の節は、将彦を敬う事をしながらも、女性の匂いがするとヒステリックに問い詰め、人相が変わり、鬼の形相で罵倒する強さをもっていた。
その間を取り繕うのが父親の秘書の大嶽 和繁であった。
大嶽 和繁は父親がなくなった後に三丸商事の取締役となり、明応大を卒業した際に、採用に全力をかけてくれた恩人であった。
その後、父親が船長を引退し、退職する頃には会社が倒産し30年前に50歳で肝臓癌でなくなった。
あまりに早くなくなった為に、未だに死んだ事を信じられない為に、アルツハイマー型認知症になっても、父親の帰りを待っている事があるとの事。
前回、病院に行ったら、かろうじて私の顔は理解出来たが、母親の居室担当の介護士より「トイレの場所がわからなくなりまして。何度もトイレの場所を教えているのですけど…夜間だけはテープ式にしても良いですか?一応、センサーは着けているのですけど…今月に入って、3回転倒してます。」と言われたとの事。
やむを得ないけど…別居している女房の美紀子(47)も「早く死ねば良い。ばばぁ〜が死んだら慰謝料もらうからなぁ…」っとなげやりになってしまった。
それにしても、あんなに仲良かった女房も、母親の看病をお願いにしてから疎遠となってしまったなぁ…
そりゃ、台湾にはかれこれ9ヶ月いるし、夏には一度帰ってきただけで、女房からは「あんたは要らない。すぐに、離婚して、私を解放して…っと。涙ながらに言われたが、会社での昇進にも響くので、別居する事は許したが、流石に離婚だけは出来なかったなぁ…」
最近は、電話さえなくなり、メールで金の催促と母親の看病をこれだけしましたとの事後報告メールだけだからなぁ。
息子も、海外留学を考えているらしくそれに付き合うと留学に賛成する女房には参ってしまうなぁ!と思うが女房には頭が上がらない為に口には出せないでいる。
同僚の門脇 光夫(48)は同じく台湾に来て9ヶ月の月日を過ごしているが、女房を台湾に連れてきて家庭は円満であった。
息子の宏(18)は野球推薦で大阪東工大付属で寮生活をしているので、これと言って不満はないようであった。
甲子園の夏の大会では、準決勝で春夏連覇の大阪桐光に逆転負けをしたが、今秋のドラフトの注目になるとマスメディアを通して三丸商事もバックアップしていた。
大阪東工大には優秀なエンジニアも多く、三丸商事のインフラ設備や子会社の三丸自動車にも幅広く採用されていた。
それにしても、宏君はすごいなぁ…ドラフト候補だねぇ?
そうですねぇ、ありがたい事に…でも、注目されてはいますが、やはり、今年の甲子園で夏を2連覇した大阪桐光の選手程ではないですよぉ。
宏は野球よりも、三丸商事に入社した方が良いとは思っているけど、本人はプロでやりたがっているから、本人が決める事かなぁ?
親としては、プロの世界は厳しいとは言っているし、最悪、プロに入って肩をこわして3年以内にクビになる事がある事は伝えてはいるなぁ…高卒でプロなら北陸ハムかチオビタスワンか九州ベアーズが育成には評価が高いから大丈夫だと思うけど、名門の東京ジャッカルや大阪トラストは潰されそうだなぁ。
それにしても、球団から話がきているのですねぇ?
あぁ…この話は内密に…
とはいえ、スポーツ新聞は各社、裏ドラフト1位、隠し玉などと騒いでいますよぉ。
まぁ、今年の高卒の投手の3本柱とも言われていますし、甲子園の優勝に導いた里山投手よりも将来的には評価が高いと言われていますからねぇ?
球種がカーブ、スライダー、フォーク、スプリット、ナックル、ストレートと一級品ですからねぇ…
いやいや、まだまだですよぉ。
そう言えば、川上課長は家庭は大丈夫なんですかぁ?
いやぁ、うまくいってないよぉ…それはまずいですよぉ。女房が別居に、子供が留年に、母親が、アルツハイマーとは…来年の査定で人事部が抜き打ちで訪問しますから?
来月から抜き打ちで訪問するらしいですよぉ。
マジかぁ、それはまずいなぁ…
大丈夫ですよぉ。
特急の受注も一括して、出来たのも、課長のおかげですから、5日間の有給を申請して家族には私の方から伝えておきますよぉ。
そっか、ありがたい。
いえいえ、先輩が明応大のラグビー部でその後輩だから、入れたのですから、そのぐらいはさせて下さいよぉ。
とはいえ、女房はおまえの後輩だったよなぁ…まぁ、そうですけど美紀ちゃんですよねぇ?
ラグビー部のマネージャーの一人だから、友人なだけですよぉ。
光夫君の奥さんは確か白百合女子大だったねぇ?
まぁ、そうですけど…ミス白百合だったねぇ…まぁ、そうですけど…女子大ですよぉ…アナウンサー志望か、航空会社などに入る為ですよぉ。
まぁ、そのコネが、なければ三丸商事が運営している系列の航空会社には入れなかったですよぉ!
とはいえ、美紀子さんと別居とは、とても優しくてしっかりしていたと聞いていましたが…
まぁ、確かに…よくやってくれて、頭が上がらないよぉ…
でも、アルツハイマー型認知症が重症で認知症がかなり早いペースで進んでいるから、女房も大変らしいんだぁ…
最初は、大丈夫だから心配しないでだったのだが…この数ヶ月で「私の事をこの泥棒がぁ!」「あんたは誰だい、将彦の女かい?あたしの夫をたぶらかせて!メス豚がぁ!」っと殴られた。「ベッドでトイレをした。」などと母親の看病が辛くなってきたみたいなんだぁ…
そんな状況もあって、8月に施設に入所したけど…施設でもキーパーソンだから、2週間に一度は顔を出しているけど、転倒が続いて参っているみたいなんだぁ…もちろん、妹の美佐江(44)が最近はキーパーソンを変わってもらって母親の看病をしているけど…やはり、あの性格だから、自分に出来なかった事が悔しかったのか?今度は息子の義雄に力を注いでいるみたいなんだぁ…
義雄にはBMWを買ってやったり、女の子と海外旅行に行く費用を出したりブランド品を上げたりと好き放題にやっているのだぁ…
それなら、なおさら、ちゃんと、奥さんと話さないとならないですよぉ。
このままでは、川上課長が倒れたら、誰が面倒見るんですか?
一度、しっかりと家族会議をして話し合って下さいよぉ!
わかった。
では、明日から一度、日本に帰国するよぉ。
川上課長、先程から他人ごとにしか聞こえないのですけど…身内の事ですよねぇ?
もっと、しっかりと話す事が大事だったのではないですか?
女房が別居する前に手をうつことは出来なかったのですか?
おいおい、君には関係のない事だろう。
そこまで、言われる筋合いはないのでは?
いやぁ、ありますよぉ。
私が、大学の後輩でラグビー部のマネージャーをしていて、美紀子さんをインドに呼び寄せて、インドの大学に留学する決心をさせましたから。
あぁ…その前に伝えておかなきゃならない事があります。
なんだぁ…
実は、この際だから、言っておきます。
先輩が初めて、インドで山手線の旧車両30台の受注をしましたよねぇ?
受注も国土交通省や国鉄に了承を得なかったばかりか、大使館にも連絡を入れていなかったですよねぇ?
あぁ…そうだったなぁ…勢いって大事だから、その場のノリでなぁ。
まぁ、時としては大事ですが、部下としては大変だったんですよぉ!
先輩が同じ大学で私がラグビー部の後輩だから、入社する事が出来たのはとてもありがたいですが、私はインフラの事業で水道や電話、道路などの復興事業がしたかったんです。
それが、鉄道受注ですよぉ。
はぁ?それも、大切な事業の一つだろうが…
いやいや、インフラを行ってからの事業ですよぉ。
それを、行う前に、鉄道受注では話になりませんよぉ。
部下がどれだけ大変な思いをしたと思うですか?
まずは、道路を作って、線路を引いて、インフラ設備として電力、水道、鉄道運輸など様々なところと連携が出来てからのプロジェクトなんですよぉ!
そうだったなぁ…その節はありがとうございました。
はぁ?軽い、軽い、本当に心からの感謝が無さすぎるんですよぉ!
しっかりして下さいよぉ…
あれは、もう25年前だなぁ…よく、覚えているなぁ…あれのおかげで本社に残る事が出来ているから、みんなには感謝だなぁ…
川上課長は何も知らないですねぇ…あの時の同期は東大、京大、早大、関大、そして、明応大ですよぉ…
つまり、私は本社では、本来働けなかったって事かなぁ?
上司の坂口先輩も明応大出身で仲良くさせてもらっていたけど…坂口先輩は明応大の大学院出身ですよぉ…?
えぇ、そうだったんだぁ、大学を言われたら、明応大と伝えますけど…
それに、実は誰よりも川上課長の為に動いてくれたのは吉永 美紀子さんですよぉ!
はぁ、何を言っているんだぁ?
あの時、インドでインドの電鉄、運輸、商社を動かして営業していたのは、奥さんの美紀子さんです。
それに、明応大学ラグビーのOBとOGに連絡を取り、運輸大臣のOBにインドに道路を作る計画を持ちかけて実現させた、影の功労者なんですよぉ。
たぶん、インドに来て、3ヶ月の間に仕事がスムーズになったと思いませんか?
川上先輩の事を支えるって、インドに留学したのですよぉ。
本来なら、アメリカに留学するところ、インドのニューデリーに留学ですよぉ…あり得ます。
なおかつ、治安も悪く、女性一人での行動も命懸けで、ガードマンを雇うのも相当な出費だったと思いますよぉ。
まぁ、たまたま、川上先輩とニューデリーで4年間働いて来れたので、黙っていましたけど。
その間、美紀子さんは、3ヶ月に1度のインド料理屋さんでのタンドリーチキンとナンとカレーを一緒に食べる事だけを楽しみにしていたんですよぉ。
最初は苦手だったけど…宗男さんが好きなら美味しく食べれるようにならなきゃなぁ…って。
そんな苦労を先輩知ってましたか?
この話は美紀子さんから死ぬまで持って行くって言っていましたが、正直、先輩の話を聞いて腹が立ちました。
川上課長…どうしたんですか?
そんな事が、あったとは…「ウォー…久しぶりに男泣きやぁ…本当に今まで、ついてきてくれて、ありがとう。ありがとう。ありがとう。これからも…」
「悪いけど、初めて殴らせて下さい。」
バシィ!
「これは、美紀子さんの分」
「次は、今まで川上課長の為に苦労した分」
バシィ!
「ごめんなぁ…仕事ばかりで自分の事ばかりで、すまなかった。すまなかった。でも、これからも助けてくれ!頼む。」
川上課長…大丈夫ですよぉ。ちゃんと、今までの事をしっかりと話して下さい。きっと、許してくれます。今みたいに甘えれば良いんですよぉ。
出来るかなぁ?
出来ますよぉ!
その為に、美紀子さんからこの話を親身になって聞いたのですから。
よし、川上課長に明応大学ラグビー部の後輩よりエールを送ります。
フレー、フレー、川上 フレー、フレー、川上。ファイト!!
ありがとう、門脇!
これより、台北発羽田行き、14時発ANA124便の搭乗手続きを行います。
はい、搭乗券です。
ありがとうございます。
これより、離陸致しますので、シートベルトの着用をお願い致します。
ピン。
シートベルトの解除の音がなり、しばらくしてから、日頃の疲れがたまり眠りについた。
「川上さん、はじめまして?
まさかここで会うとは奇遇ですねぇ?」
「あれぇ、君は確か、門脇君の後輩の吉永さんだねぇ?写真を見せてもらったから、顔だけは知っていたんだぁ。同じ大学の後輩に逢えるとはうれしいなぁ…」
「私も、ラグビー部の尊敬する先輩に逢えるとはうれしいです。実際に試合を見る事はなかったのですが、ラグビー部で保管されている優勝トロフィーとその時の映像は見させて頂いてます。握手してもらっても良いですか?」
「はい、どうぞ。」
「うれしいなぁ!ありがとうございます!」
「ところで、ニューデリーには何をしに来たのかなぁ?」
「はい、留学で出来ました。ニューデリーにある大学に。」
「でも、インドは治安が良くないのによく来たねぇ。」
「はい、色々、迷ったのですが、タージ・マハルを見て見たかったので、是非ともそれがあるニューデリーで勉強したいなぁ…って」
「ちょっと、待って、タージ・マハルはここから200キロも離れているけど…」
「最近は、日帰りでも行けるらしいですよぉ。ニューデリーからアグラまでが2時間、そこから、5キロらしいです。良かったら行きませんか?門脇さんも一緒に。」
「えぇ、何で、門脇君がいる事を知っているんだぁ?」
「だって、門脇さんから先輩の話を聞いたんです。」
「先輩、すいません。今日はアグラでの営業が中止になりまして…」
「おい、これは、私をはめたなぁ。」
「許して下さいよぉ…」
「それは、みんな揃ったので、タージ・マハルに行きましょう。」
「かぁ、参ったなぁ…」
「そう言えば、美紀子と初めてタージ・マハルで写真撮ったなぁ?近くのレストランで、カレーとナンとタンドリーチキン食べたなぁ…旨かったなぁ…」
ふぅ、久しぶりに夢を見たなぁ…あれぇ、まだ10分しか経っていなかったかぁ…もう少し、寝るかなぁ。
ピンポーン。
おめでとうございます。
夢想芸術家カリスマシェフ〜澤村 和樹の思い出を辿るツアーに当選しました。
はぁ?何だぁ…
宗男さん、もう、だらしないなぁ…シャツがズボンから出てますよぉ。
あれぇ、美紀子どうしたんだぁ?
何を言っているのぉ?
今日は夢想芸術家カリスマシェフ澤村 和夫樹の思い出を辿るツアーに当選したじゃない。
私は、すごく楽しみにしていたんだから。
そっか、そうだったかぁ?
はい、今回、お二人に取って思い出の写真より、ニューデリーからタージ・マハルに向かって出発です。
はい、これより、ニューデリーの駅から上に上がっていきます。
「かぁ、すげなぁ…こんなに人や自転車が多かったんだなぁ?」
「本当ねぇ?こんなに人が多かったんだぁ。あんまり、気にした事がなかったなぁ…」
「おい、見てみろ、ガンジス河?かなぁ。みんな、風呂に入っているぞぉ。」
「もう、インドの人にとっては、神聖な儀式何だからねぇ?風呂に入っているは失礼よぉ。」
「ごめん、ごめん、インドに来てまともに見たことなかったからなぁ…それに、一緒に見たのも始めてだなぁ…」
「本当ねぇ。そう言えば、インドでの思い出もタージ・マハルに行ったか、ニューデリーで食事しただけだったからねぇ?まぁ、宗男さんは仕事で忙しくしていたからねぇ。」
「そうだなぁ…観光らしい、観光はタージ・マハルに行っただけだったからなぁ…まぁ、治安も良くないから、日本人はお抱えのガードマンを雇わなければ命が危ないからなぁ。」
「美紀子は女性だから、なおさら、何処にも行けなかったのでは?」
「だから、門脇さんにはガードマンの手配や宗男さんに逢えるようにしてくれたんですよぉ。でも、逢えるのが3ヶ月に1回、それも、ニューデリーのインド料理屋さんだけ…後は大学の校内とその周辺だけだったなぁ…でも、宗男さんを追っかけて来て後悔はないのぉ。ありがとうねぇ。」
「ごめんなぁ…あんまり、美紀子の事を考えて上げられなくて、寂しい想いをさせたなぁ。良いのよぉ。宗男さんが少しずつ、出世してやりがいを持って仕事が出来た事だけで満足よぉ。」
「美紀子、見てみろ。タージ・マハルだぁ…」
「綺麗ねぇ?そう言えば、タージ・マハルは王妃の墓何ですよねぇ?」
「確か、そうだったなぁ。」
「こんなに愛されていたとは素敵だなぁ…
そう言えば、結婚してから、愛されていたのかなぁ?私?」
「何を言っているんだぁ。愛していたから、好きな物を買ってやっただろう。」
「違うのぉ、しっかりとした言葉や温もりが欲しかったのぉ。でも、この際だから、しっかりと手をつないでねぇ。」
「もちろんだぁ…離すなよぉ!」
はい、お疲れ様でした。
いかがでしたかぁ?
久しぶりに若い頃に戻った気分はどうでしたか?
「いやぁ、最高だなぁ…昔の気持ちが蘇ってきましたよぉ。ありがとうございます。」
「私も、とても素敵な思い出が出来てうれしいです。ありがとうございました。」
それでは、しっかりとした愛のメッセージをこの際だから伝えて下さいよぉ…。
「これまで、辛い思いばかりさせて、ごめんなぁ。これからも、美紀子だけを愛します。」
では、奥様は?
「これからも、宗男さんだけを愛します。宜しくお願い致します。」
よし、それでは、お食事と致しましょう。
まずは、食前酒からです。
食前酒はガンジスの夕日から作ったお酒になります。
こちらはニューデリーの紅茶をベースにして、ほのかなハチミツとレモンを入れて作っております。
それにしても、ガラスのコップは素敵ですねぇ?
こちらは、ムガール帝国で愛用され、神秘のゾウを細工しているコップとなっております。今回は時空を越えて取り入れました。
次に、一枚プレートです。
「これは、素晴らしい。先程見た風景がそのままになってますねぇ。こんな、料理は初めてです。感動します。」
「私も、こんな芸術は初めてです。これ、全部食べられるんですか?」
はい、全部食べる事が出来ますよぉ。
まずは、タージ・マハルをイメージして、ライスを型にはめて上からチーズをコーティングしました。
下に向かって、庭園の池をココナッツと白ワインと香辛料で色あいを出しており風味豊かなカレーとなっております。
この色を出すのは難しく、試行錯誤の末に完成させました。
そして、樹木ですが、パイ生地を樹木の型にはめて、焼き上げ、色とりどりの旬の野菜を盛り付けております。
「なるほど…本当に、風がなびいたら葉っぱが落ちそうですねぇ。」
赤茶色の大地は、タンドリーチキンを並べております。
「へぇ、すごいですねぇ?」
はい、AIを駆使して焼き加減を調整して仕上げております。
そして、忘れてはいけないのが、ガンジス川になりますが、こちらは、飴細工とチョコレートで出来ております。
黒い部分はガートーショコラのケーキとなっております。
それでは、夢想芸術家カリスマシェフ〜澤村 和樹を紹介致します。
この度は奇跡の出逢いにより、こちらにお越し頂きまして、誠にありがとうございました。
こちらの世界は残り僅かになっておりますが、悔いなくお過ごし頂ければ幸いです。
皆様には、声だけの紹介となりますがご了承頂ければ幸いです。
いやいや、一目で良いから、顔を見せて、お礼を言わせて下さいよぉ…
恐れ入りますが、それだけはこの世界では出来かねます。
申し訳ございません。
そうなんだぁ…カリスマシェフの威厳が大事なのかなぁ?
そう言う訳ではございませんが、この世界での掟とのみお伝えをしておきます。
そうかぁ。わかった。
それにしても、本当に美味しかったです。ありがとうございました。
凄く素敵な時間とこんな最高な食事が出来て満足です。ありがとうございました。
まもなく、羽田に到着致します。
ご搭乗ありがとうございました。
お出口はこちらになります。
もう、お客様はみんな降りたかなぁ?
はい、確認してきます。
お客様?お客様?羽田に到着しました。
お客様、お客様、お客様…
機長、亡くなっております。
すぐに、救急車の手配をお願い致します。
一方、その頃、門脇から昨日、電話を受けた美紀子はBMWを運転しながら「あいつ、あったら、土下座でもさせなきゃ、このイライラおさまらない。今頃、門脇さんを通して謝罪を受けても、あの鈍感男はどこまで響いているかぁ…わかったものじゃないわぁ。それに、門脇さんとの関係も30年続いているのに、気付いていないし、義雄はあなたの子供ではないのに、気付いていないから、笑える。それに、インドの事もすっかり忘れていた。でも、あの時の宗男さんは確かにかっこ良かったけど…その後はぶくぶく太り、豚みたいに太りらしたから、半年の夜の営みは苦痛でしかならなかったなぁ…」と言っていて、ふとぉ、視線をスマートフォンに目をやった瞬間、目の前がガードレールとなっていた。
その後、首都高でガードレールにぶつかり大破したBMWに美紀子が乗って同じ時刻に亡くなっていた事を後から聞くのであった。
しかし、お互いの顔は満面の笑顔で涙がこぼれ落ちていたのは誰しもが知らなかったのだった。
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