奇跡の晩餐 夢想芸術家カリスマシェフ〜 澤村 和樹
末吉 達也
第1話 懐かしい風景
私が今まで出逢った中で夢想芸術家カリスマシェフ〜澤村 和樹(カズキ)にあったのは奇跡だったのか?それとも夢だったのか?幻だったのか?なぜ、私が招待されたのか?未だにわからない…ただ、言える事は涙が止まらなかった事を覚えている。
村中 幸一(74)は50年連れ添った村中 茂子(70)を3年間という癌の闘病生活から見送り葬式より帰って来た。
あまりに普段遣わない気疲れがたまってしまい、久しぶりに飲んだお酒もめぐりソファーで眠りについた…
夢の中で、昔の思い出が鮮明によみがえってきた…
村中 幸一は茂子に出逢ったのは50年前に遡るが趣味で始めた会社のサークルの「山の会」がきっかけであった。
当初は、社長の趣味で発足された「山の会」であった為に、渋々、同僚と参加した。
1台のバスを貸し切り日帰り旅行の感覚で参加した事を思い出す。
同僚の佐藤 孝雄は隣町の高校の出身で営業で6年目だった。
お互いに家も近所で、当時流行っていたインベーダーゲームを喫茶店で休みに一緒にやる程の仲だった。
あまりに、楽しすぎて、給料日前にはお金がなくなり、お互いにインスタントラーメンのストックが多い方の家に行き食べていた。
社内にも同じような光景を見るようになり、小泉酒造の社長、小泉 貴史(54)が立ち上がり「山の会」を発足した。
一部の社員の中に、今、流行しているインベーダーゲームをやりに身体を休めるどころか身体を壊す一歩、手前の社員が多い、そんな、社員を改善するために、今回は社員全員に金一封を渡します。
その代わり、「山の会」の参加をお願いします。
私と孝雄は「やった!これで上手いご飯食べられる…」って興奮した事を覚えている。
そこに、事務のお局様 木村 和子(32)がやって来て、「あんたたち、馬鹿なのぉ?規則正しい生活をしなさいって事でしょう?買うのは米・味噌・醤油・卵に野菜でしょ…余ったら、貯金しなぁ!」と言われた事を今でも、鮮明に覚えているなぁ…
初めて、「山の会」に参加した時は登山が目的だった事を知らずに、ジーパンとシャツと缶ビールとつまみを持って行った。
はい、初めましてこんにちは!
「小泉酒造〜山の会」を主宰しました。
社長の小泉 貴史です。
一緒に頂きを目指して頑張っていきましょう!
今回は、紅葉を見ながら、高尾山に登って行きたいと思いますが…体力が着きましたら、富士山にも登って行けたらと思います。
来年の目標は立山です。黒部ダムを見ながら紅葉シーズンに行けたらと思っています。
そして、準備万端に立山と黒部ダムが映っている紅葉の写真をみせてくれた。
「おぉ!すげぇ、綺麗だなぁ…」「最高!」
「行ってみたい」っと口々に言っていたら、突然、社長から「お前たち、遠足気分かぁ!山を甘く考えていないかぁ?一歩踏み入れたら、山の神が祟りそして、大地の神様が…」っと話始めた。
話を始めると長い為に、社長秘書の村雨 雪子(50)が途中より割って入り「これより、荷物チェックを始めます。」と言い、荷物チェックをはじめ、つまみとお酒は没収された。
「山の会」の主旨は、「規則正しい生活と社内結束です。」
この機会に、連携を図りながら、時には明るく、時には厳しく切磋琢磨して行ければと考えて、席は決めました。
では、席替えをします。
なお、新人と中間社員、中間社員とベテラン社員と席をわけてますのでと言われた。
確か、孝雄はベテラン社員の事務のお局様の木村 和子だったなぁ…行きのバスでは、緊張して先生と生徒みたいなやり取りだったなぁ…帰りはべったりとしていたなぁ。
そう言えば、その時、茂子にあったんだなぁ…
茂子は女子高を卒業して、2年目で男性とまともにしゃべるのもはじめてだったなぁ…常に、目を見てしゃべらずに下向き加減でほほを真っ赤にしながら、ハンカチで顔を隠していたなぁ。
かわいいかったなぁ。
確か…席についてから、すぐにお茶と頂上についたら、食べるおにぎりを渡されたんだたなぁ。
行きのバスの中では、お互いに意識して「はぁ、宜しく」と言った程度だったなぁ…
確か、行きのバスでは、寝ていたからなぁ…
そうそう、前日は喫茶店に入り浸りになり、朝までインベーダーゲームを孝雄とやっていたなぁ…そう言えば、お局様に強引に「着替えてきなぁ!」っと6時頃に家まで引きずれられ帰ったんだったなぁ…そして、8時には叩き起こされ、しぶしぶ、リュックの中に酒とつまみとお金を持って集合したんだなぁ。
そう言えば、「村中さん、村中さん、起きて下さい。みんな、降りましたよぉ…私達が最後です。」が初めて目を見て会話したんだよなぁ…
俺は「ありがとう。」と言ったかなぁ…
「さてぇ、高尾山に着きました。
それでは、登って行きましょう。
途中では、天狗焼きなどがありますので食べ歩くのは自由ですけど…ごみは持ち帰って下さいねぇ?
今回は親睦を深める為ですから隣同士で頂上を目指して下さいねぇ…
私達は先にロープウェイに乗って先に頂上に行きますので…」
「えぇ?一緒に歩くのでは?」
「はぁ?社長と私がいない方が親睦を深める事が出来るでしょ?
さぁ、登った、登った!」
「はじめまして、村中 幸一です。さっきはありがとうなぁ…」
「いえいえ、はい、よぉ…ろしくお願いいたぁ〜しますぅ。長谷川 茂子です。」
「はぁ?名前が聞き取れなかったけど…少し、大きな声で言ってもらっても言いかなぁ?
はい、長谷川 茂子です!みたいにさぁ。」
「はい…、長谷川 茂子です!!宜しくお願い致します!」
「ビックリしたなぁ!!そんな大きな声とは言ってないけど…」
「あぁ…すいません。」
「いえいえ、大丈夫だよぉ。長谷川さんだねぇ?宜しくねぇ…堅苦しいから、茂子さんで言いかなぁ?」
「はい、大丈夫です。」
「そうだぁ、こっちは幸一、いやぁ、幸ちゃんで良いよぉ…」
「はい、村中さん」
「おい、おい、真面目かぁ?」
「私より4歳も年上ですから、すぐには…」
「ところで、故郷は何処なんだ?」
「私は、長野です。」
「へぇ、そうなんだぁ…俺は、地元の山梨県何だぁ!」
「そうなんですかぁ…都会ですねぇ。」
「そんな事ないよぉ。都会ではないって。」
「そうなんですかぁ…都会のイメージがありますよぉ。」
「まぁ、そう思うけど甲府だよぉ。今度、機会があったら山梨観光に連れててやるよぉ…」
「いえいえ、遠慮しておきます。まだ、村中さんの事がわからないですから。」
「まぁ、そうだなぁ。ところで、何で小泉酒造に就職したんだぁ?」
「はい、高校に求人が来たので応募しました。最初は戸惑ったのですけど…山梨県なら長野県から近いから…」
「ちょっと待って、確かに山梨県で近いから嫌なら帰ろうって思っていない?」
「いえいえ、そんな事はないですよぉ。でも、中学に入ったばかりの弟が心配で…」
「なるほどねぇ…確かに心配になるねぇ?という事は仕送りとかしてるのぉ?」
「はい、給料の1/3は実家に送ってます。両親も健在なんですが…父親は戦争で片手を失っているので、無理は出来なくて、母親が支えているんです。」
「えぇ?それは大変だったねぇ…」
「口で言うほど、甘くはなかったです。父親が戦地から引き揚げて来て、最初は戻って来て嬉しかったのですけど、片手がない事で就職もまともに出来なくて…何度も弱気になって自殺をしようとしてねぇ…母親が必死で止めて、今はやっと味噌を作るお仕事を両親はついています。でも、それまでは農家のお手伝いだけだったので家庭は火の車でねぇ。母親の着物を着たり、ズボンやシャツを縫い直して使っていたんです。でも、教育が必要になるからって、高校まで行かせてくれました。私も中学から新聞配達したり、豆腐屋さんで朝の配達をしたんです。大変だったけど楽しかったなぁ…あぁ…ごめんなさい。つい長々と話をしちゃいましたねぇ。」
「そうなんだぁ…大変だったなぁ…俺はなにやっているんだろう…馬鹿だよなぁ。」
「えぇ?村中さん泣いてます?もう、男なら泣かんよぉ…笑って下さいよぉ…」
「そりゃ泣くって、給料の1/3も…なんて、茂ちゃんは素敵何だぁ。」
「村中さん、私は田舎出身だから、節約になれているだけですって…泣くほどでもないですって…」
「いやいや、俺は小泉酒造の社長と親が同級生だからコネで入っただけだよぉ。親が頼み込んで就職出来たけど…インベーダーゲームにはまってインスタントラーメンしか食べてないなぁ…」
「楽しいですか?インベータですか?私はまだ、やった事がないですけど…」
「インベータでは、なくてインベーダーねぇ面白いけど…でも、はまってしまうから…今はやめておく方が良いよぉ。そうだぁ。今度、料理や節約する方法を教えてもらえないかなぁ?」
「えぇ?私は料理ってほどではないですって…肉じゃが、きんぴらごぼう、野沢菜漬けとか本当に質素なものですって…それに、教えるほどでも?」
「長谷川さん、頼む!こんな機会はないから…頼むよぉ…」
「もう、皆が見てますから、正座して、土下座しないで下さいよぉ…恥ずかしいじゃないですか?」
「解りました。なら、今度、みんなで村中さんのお家にお邪魔しますよぉ。」
「本当に?やった!やった!ばんざーい、ばんざーい!」
「もう、恥ずかしいなぁ…でも、こんなに喜んでくれてうれしいです。」
「ねぇ、ねぇ、茂ちゃん、天狗焼きだよぉ?」
「私はお金は持ってきていないので大丈夫ですよぉ…」
「えぇ?そうなんだぁ…大丈夫だよぉ。ほらぁ?」
「えぇ?私にですか?」
「遠慮するなぁ〜って。」
「ちょっと、お金は返しますねぇ?」
「何言っているんだよぉ。水くさいなぁ!兄貴ぐらいに思ってくれって?」
「はい、ありがとうございます。」
「おいおい、どうしたんだぁ…泣いているのか?」
「だって、男性から頂いた事がなかったから…うれしくてぇ。おいしい。ありがとう。」
「そっか、今迄、頑張ってきたんだなぁ。よし、よし。」
「よし、頂上だぁ!」
「茂ちゃん、見て見て!気持ちいいなぁ…!」
「本当だぁ!東京にもこんな素敵な場所があったんだぁ。」
「あぁ、そろそろ、お弁当でも食べよう。」
「そうですねぇ。」
そう言えば、あれが初めて食事として二人で食べて、飲んだ事になるなぁ…おにぎり(梅)、おにぎり(鮭)、おにぎり(昆布)、唐揚げと玉子とほうれん草のおひたしとお茶だなぁ…
それにしても、良く覚えているなぁ。
ふぅ…すっかり、寝てしまった。
それにしても、久しぶり振りに鮮明な夢だったなぁ…
疲れているなぁ、たまにはインスタントラーメン食べて風呂に入って寝るかなぁ…
そう言えば、この棚の上に、あった、あった、サッポロ一番味噌味。
いやぁ、懐かしいなぁ…賞味期限はあぁ…大丈夫だなぁ…良かった、良かった。
サッポロ一番には、玉子と挽肉とスイートコーンともやしだなぁ…おぉ…今日は珍しく揃っているなぁ…買い物した覚えはないけど…茂和だなぁ…たまには、気が付くなぁ…。
そう言えば、孝雄と良く食べたなぁ…あの時は給料日になったらスペシャルセットとして、これに、半ライスと餃子を着けたなぁ。
さすがに、歳を取ったからスープは飲まなくなったなぁ…でもなぁ、茂子がいないと侘しいなぁ…ちくしょう、涙が出ちまうなぁ。
そう言えば、茂和はいくつになったんだぁ…俺と茂子が結婚して、50年となるとそっか、あいつも49歳になるのかぁ…早いなぁ…確か、45歳の時に高校に入った孫の悟君にあったなぁ…元気なのかなぁ…俺もそう言えばじいさんだなぁ…
さてぇ、風呂に入るかなぁ…
それにしても、お風呂も沸かしているし、なおかつ、入浴剤のバスクリンの檜の香りまで用意してるとはうれしいなぁ…
ふぅ…いやぁ、今日はよく休めるなぁ…茂子、ありがとうなぁ…素敵に茂和も成長したよぉ。
さてぇ、寝るかなぁ…おぉ…今日は布団まで太陽の光を浴びてぽかぽかだなぁ…さてぇ、明日も自転車の駐輪場の管理人頑張らなきゃなぁ…おやすみ
ピンポーン!おめでとうございます。
夢想芸術家カリスマシェフ〜澤村 和樹(カズキ)の思い出を辿るツアーに当選しました。
はぁ、はい?
もう、お父さんはまだ、ジャージなの?
えぇ…えぇ!!
茂子?茂子じゃないかぁ?
病院のベッド…いやぁ、死んだんじゃないかぁ?
何、寝ぼけているのぉ?
楽しみにしていたでしょ?
料理の鉄人に出ていた、澤村 和樹の思い出を辿るツアーに当選したのよぉ…。
すごいんだから、夢想芸術家カリスマシェフ澤村 和樹は和洋中と全てのレシピを一枚のプレートに再現する魔法の腕を持っているんだからねぇ。
へぇ、そうなんだぁ…もう、テレビはニュースか大河ドラマと旅番組しか見ないから、バラエティーは見ないから、知らなすぎるのよぉ…でも、そんな幸一さんは、好きだけど。
それでは、二人がどうしても行きたがっていた場所を一緒に発表してもらえますか?
それでは…せいのぉ、「立山、黒部ダム」「立山!」
いいですねぇ。二人とも息が合いますねぇ…。
「もう、お父さんたら、場所だからねぇ?黒部ダムは観光地でしょ?もう、恥ずかしいなぁ…」
「悪い、悪い。」
「まぁ、同じで良かったけど…」
はい、それでは、ゆっくりと周囲が上がります。
「茂ちゃん、すごいなぁ…透明のエレベーターが上がって行くよぉ。」
「でしょ?」
「これが、このツアーのすごいところなのぉ!
技術が進歩したから、家に居ても、その土地の匂いや風景を再現出来るのぉ。
もちろん、触って感触も再現されているからねぇ。すごいでしょう。」
「本当だぁ!すごいなぁ。現地に行っているみたいだなぁ…」
「それでは、まずは立山連峰の紅葉をお楽しみ下さい。」
「茂ちゃん、すごいなぁ…紅葉が色付いて真っ赤だなぁ…」
「本当に素敵ねぇ。」
「本当に行けるとは思わなかったから、うれしいねぇ…」
「本当!」
「そう言えば、高尾山の後、社長が体調を悪くして、山登りはあの一回だけだっからなぁ…」
「でも、そのおかげで幸一さんと仲良くなったからあのきっかけで幸せになりました。」
「いやいや、茂ちゃんと逢えた、私の方こそ幸せになりました。」
「まぁ、うれしいことをさりげなく伝えるんだから、ありがとうございます。」
「そう言えば、高尾山のきっかけがなければ、孝雄もお局様と結婚しなかったよなぁ!」
「本当だねぇ?」
「下山するときに、足を挫いて歩けなくなったねぇ…」
「そうそう、眼鏡も壊したねぇ…」
「それで、体力だけがある孝雄が高尾山の入り口までおんぶさせられたねぇ。
でも、まさかなぁ…眼鏡を外したら綺麗だったからビックリしたなぁ…」
「私も、あそこまで、綺麗な人だとは意外だったなぁ…
でも、口調は相変わらずだったなぁ…
たぶん、初めて社会人なって泣かされたなぁ…
今でも、覚えているなぁ…
ちょっと、足を挫いて歩けません!あんた、私を背負っていきなさい。あぁ…あんたじゃないわぁ。孝雄背負って。もう、あんた馬鹿なの…荷物持ちなさいよぉ…気が利かないわねぇ。若いってだけで、使えない。社長もこんな使えない社員雇ったわねぇ。」って言われたなぁ…」
「俺も覚えているよぉ…そして、「私は、先輩を尊敬してます。憧れです。先輩の下で一生懸命ミスをしないように、頑張っています。」って言ったよなぁ!」
でもなぁ…茂ちゃんがここで強い意思や辛い過去などを聞いていたから…
つい、割って入ってしまったねぇ?
確か…「あんたさぁ、足を挫いて眼鏡を壊れて、冷静になれないのは大人として、どうなんだぁ!お前こそ、最低だぁ!」って叫んだねぇ!
私は、あの幸一さんが叫んでくれてスカッとしたんだぁ。ありがとうねぇ。
その後、さりげなく「本当にごめんなさい。私も動揺していて、つい、イライラしてました。こんな優秀な部下がいないのに…馬鹿だよねぇ」って泣きながら謝ってくれたんです。」
「えぇ、そうなんだぁ…鬼の目にも涙だなぁ…
どうりで、あの後、急に縁なしの眼鏡に化粧を始めて、優しくなったと思ったなぁ…」
「まぁ、それだけではないけど…孝雄とねぇ…」
「なるほどなぁ…」
「ところで、なぜ?紅葉があれほど真っ赤に色付いているか?茂ちゃんは知っているかい?」
「えぇ、解らないなぁ…」
「実はねぇ…恥ずかしくて、真っ赤になっているんだぁ!」
「えぇ!それはないよぉ。」
「じゃ、紅葉を見ると何て言う?
「綺麗」、「素敵」、「写真取ろう」ってなるよねぇ?
それも、全国から観光客が来るし、至るところに写真が貼られるよねぇ…
流石に恥ずかしくて街も歩けなくなっちゃうよなぁ…」
「確かに…」
「だから、恥ずかし過ぎて紅葉は真っ赤になるんだぁ…」
「なるほど、流石は幸ちゃんだなぁ…ってなわけないでしょ?でも、その話は好きだなぁ。」
「はい、それでは、ゆっくりと下の方に進んでいきます。はい、黒部ダムです。」
「いやぁ、本当に大きいなぁ…すごいねぇ?
宮ヶ瀬ダムもすごかったけど、迫力が違うねぇ?」
「そうだなぁ…昔、石原 裕次郎の映画「黒部の太陽」を思い出すなぁ!
あれは、確かに…1968年上映されたんだっけ?」
「そうだったなぁ…」
「でも、よく覚えているなぁ…そりゃ、当然でしょ!」
「私達が結婚した年齢じゃないのぉ、それも一緒に行った映画が「黒部の太陽」だよぉ!
あの時代は、高度経済成長期だったから、朝から晩まで営業していたから、大変だったものねぇ?いつも、茂ちゃん、ごめんねぇ?が口癖だったけど…いつも、お土産持ってきて、嬉しかったなぁ…」
「そりゃ、いつも、茂ちゃんの事を考えて、1分でも早く帰りたかったからなぁ!」
「でも、そのおかげで営業成績はいつも、トップで、奥さんに悪いからって、接待は後輩が引き受けてくれたんだよねぇ。」
「まぁ、午前中の営業は私が全部引き受けたけどねぇ。」
「そうだったんだぁ…知らなかった。」
「はい、お疲れ様でした。
2時間以上の立山連峰の紅葉と黒部ダムはいかがでしたでしょうか?
楽しむ事は出来ましたでしょうか?」
「いやぁ、本当にありがとうございます。一度は二人で一緒に行きたかったから、嬉しいです。」
「すごい素敵でした。こんな、大切な思い出を辿る事が出来るとは格別です。ありがとうございます。」
「はい、それでは、これより、夢想芸術家カリスマシェフ〜澤村 和樹による「紅葉に高揚しちゃった。あたしの心はホットプレート」をお楽しみ下さい。」
「まずは、食前酒は「立山連峰の雪解けの水〜立山」になります。」
「素敵なグラスに周囲を桜の花とドライアイスの湯気で演出されており、さりげなく金粉で春をイメージされており、とても魅力的であった。」
「すごいねぇ?イメージ通りの演出で素敵ねぇ!」
「いやぁ、シェフの意気込みを感じますなぁ。感心、感心。花丸だなぁ…」
「それでは、これより、一枚プレートをお持ち致します。」
「おぉ…これは、すごいなぁ…芸術だなぁ…」
「はい、それでは、説明の方をさせて頂きます。
まずは、上段になりますが…立山連峰をイメージさせて頂きまして頂上付近はクリームベースのシチューとなっております。
下に行くに連れて紅葉をイメージ致しまして、カボチャ、サツマイモ、人参、椎茸、松茸、舞茸などの秋の旬の野菜を入れまして、炊き込みご飯を作り、旬の野菜を細かく煮付け紅葉のように、かけております。」
「いやぁ、本当に写真の紅葉のようだぁ…」
「すごいよぉ、幸ちゃん、食べるのがもったいないよぉ…」
「はい、ありがとうございます。こちらは、写真と同様の配置になるように、ミリ単位の食材配置になっております。
次に、こちらがまだ、紅葉にならずにまだ青い森をイメージして作りました。
椎茸のサラダとなっております。」
「いやぁ、こちらもすごいなぁ…」
「素敵ねぇ…森の中にいるみたい。ナッツでしょ、クルミに紫キャベツに、舞茸に、松茸にキャビアに木の家にパンがある。」
「いやぁ、参りましたなぁ。」
「いえいえ、私達の料理が口に合うかは解りませんが、是非とも素敵な思い出になればと3年の歳月をこの料理に注いでおります。」
「3年もぉ…!」
「いえいえ、思い出を形にすればすればするほど、年月はかかるものです。」
「本当に、私達の為にこんな素敵なお食事を…」
「そして、最後に黒部ダムをイメージしました…ホワイトチョコレートで作りましたティラミスです。」
「これも、周囲をパイ生地で黒部ダムを作ってティラミスを入れて、最後にバニラアイスで再現するとは…」
「最後に、コーヒーとなっております。」
「それでは、夢想芸術家カリスマシェフ〜澤村 和樹を紹介します。
恐れ入りますが、こちらの都合上、姿をお見せする事が出来ませんが申し訳ございません。」
「今日は奇跡の出逢いに深く感謝致します。
こちらの残りの時間は後、僅かになりますが
悔いを残さずにお過ごし下さい。」
「せめて、顔をみせて下さいよぉ…」
「この世界では、お見せする事は出来ませんので申し訳ございません。」
「なら、せめて、年齢だけでも…」
「ふぅ、ここだけですけど…今年で38歳になりますよぉ。ベジタリアンではないですけど…では、さらばじゃ!」
「ぷぅ、38っとさやえんどうとかけたギャグだぁ…(笑)」
「それにしても、こんな、最高のディナーは生まれて始めてだなぁ…ありがとうございました。」
最後はお互いに涙を流して食事を終えたのだった。
その頃、病院の枕元で、両手を握り幸ちゃんと泣いていた茂子さんがいたのだった。
夢から覚めた茂子さんは「幸ちゃんと今ねぇ?立山に行って、美味しいご飯を食べてきました。3年振りだなぁ…あんなにしゃべったのぉ。ありがとうねぇ。」と言った。
そして、幸ちゃんの顔には涙が流れ満面の笑顔で息を引き取ったので、あった。
そして、何故だか口元には、ホワイトチョコレートの匂いがするのであった。
「美味しいかったねぇ?
ありがとう。」
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