『眠れないからお姉さんとお話しちゃう小説』
赤眼鏡の小説家先生
「あれあれー?」
「なぁに、君も眠れないのー?」
「ふふっ、お姉さんもなのっ」
「参ったよねー、眠れないのって、結構ストレスだもんねー」
「あっ、ならさっ、ならさっ」
「眠たくなるまで、お姉さんとお話しない?」
「えーいいじゃん、いいじゃん、お話しーよーうーよー」
「ほらっ、お話しているうちに眠くなるかも? みたいなっ」
「ねっ?」
「……ふふっ、ありがと♪」
「じゃあ、なんのお話しようかー」
「昨日見た映画の話とかっ」
「えー、興味ないー?」
「じゃあ、美味しいご飯の話とかっ」
「……って、美味しいご飯の話をしたら、お腹減っちゃうね」
「………………」
「チャーシュー麺」
「スープはちょっと濃いめの魚介系で、麺は太くて、スープによく絡むの」
「それでねっ」
「チャーシューが舌の上に乗せたら、とろけちゃうの」
「どう?」
「お腹減ってきた?」
「…………ぶー、つまんないっ」
「『食べ物のお話をして、お腹空かしちゃう作戦』大失敗だよっ」
「むーっ、だったら、話を変えてしんぜよう」
「……って、何キャラだよっ」
「お姉さんのキャラがブレちゃったよっ」
「………………ねぇねぇ、お話楽しい?」
「んー? さっきから黙って聞いてはくれてるけどさー」
「なーんか、退屈じゃない?」
「……退屈じゃない?」
「ほんと?」
「ほんとに、ほんとっ?」
「…………ふふっ、よかった♪」
「ねぇねぇ、眠くなってきた?」
「まだー?」
「じゃあ、もうちょっとお話しよっか♪」
「あっ、眠れない時ってさ」
「ホットミルク飲むといいって言わない?」
「確かね、えっと、テレビで見たんだけどね……」
「んーとっ、確かね、『トリプトファン』って言うアミノ酸がね、いいんだって」
「何でいいのかは、よく知らないんだけどねっ」
「……はい」
「知ったか知識を披露してしまい、すいません……」
「あ、じゃあ今度こそためになる知識!」
「あのねっ、眠れなくてもね、横になって目を閉じているだけで睡眠の80%の効果は得られるんだってっ」
「ねー、これを聞いたらさっ、なんか、眠れなくてもちょっと気持ちが楽になるよねっ」
「––––と、言うわけでお姉さんは、目を閉じちゃいますっ」
「ほら、君も目を閉じてっ」
「だーめっ、眠れなくても閉じるのっ」
「はーいっ、これで睡眠の80%の効果は得られましたっ」
「これで、このまま日が昇ってきても安心だっ」
「さてさて、お姉さんはそろそろ本当に眠くなっちゃったからさっ」
「お先にお眠りしちゃうけどさっ」
「君もちゃんと寝なきゃダメだよ?」
「分かった?」
「…………うん、よろしい♪」
「それじゃあ、お先にっ」
「おやすみ、おやすみーっ」
「あっ」
「ううん、1つだけ」
「あのね、えっとね……また眠れなかったらさ、その…………お話しようねっ」
「ばっ、ばいばいっ」
「ばいばいじゃないっ、おやすみっ」
『眠れないからお姉さんとお話しちゃう小説』 赤眼鏡の小説家先生 @ero_shosetukasensei
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