第6話 悪夢
(日野さんって、マスカットの被害者なんだって)
(まじで、やば)
(夜の公園で襲われたんだって、ナマでナカに出されたとか)
(かわいそう、子供できたりして)
(でもやっぱ夜の公園行くって犯されにいったとしか思えないんだけど)
(危険ってわかってたでしょ、自業自得よ)
(ワンチャンマスカットじゃなくて彼氏と青姦でもしてたとかw)
(サイテーw)(下品すぎw)
笑い声がきこえる。
人なんか見当たらないのに、私を馬鹿にする声がたくさん。
私の周りは真っ暗で、何にも見えやしない。
闇の中。
(死にたい)
(消えてしまいたい)
(なんで私がこんな目に)
今度は私の声。
きっと本音だ、だって私もそう思っているから。
(なんで殺してくれなかったの)
(もう一度会いに来るなら、今きて)
(殺して)
そんな自分の声を最後に私は真っ暗闇から目を覚ました。
窓をみると空はまだ明るくない。
過呼吸を起こしたあの日から1週間、ずっと同じ夢を見ている。
どこかも分からない場所で
私の名前を知る誰かの非情な言葉をきく
最低で最悪な夢。
目覚めると汗をかいていて、涙を流している。
汗を拭いても気持ち悪い。
涙をぬぐうと、奴に拭われたことを思い出してしまう。
(子供なんてできてしまっても、私には愛せないだろうな)
心の奥底で、奴が殺しに来るのを望んでることに私は目を向けられず、また一筋の涙を流した。
10月20日の土曜日、今日は母が来ない日。
最近の私はといえば、病室で誰かを待つばかりだ。
来るのは母と龍くんと先生、そしてナースさんだけだけれど。
コンコン
「日野さん、起きてますかー?」
そういってご飯を抱えて入ってきたのはナースの立花さん、茶髪が綺麗な美人さんだ。
「今日はよく眠れました?」
「まあそれなりに」
私の返答に彼女は少し納得のいかないような顔をしていたけど悪夢を見るといったって困らせてしまうだけだ。
ご飯を置いても立ち去らない立花さんを不思議に思って見上げると、いたずらっ子のような笑みを浮かべる美人さんがいた。
「最近日野さんのお残しが酷いと聞いたので、ちゃんと食べるように見張ることにしました!」と言ってから私に顔を近づけ
「というのは建前で、本当は少し時間をつぶしたいんです」とほほ笑んだ。
「少し、お話をしませんか?」
立花さんは私がご飯を食べている間、色んな話をしてくれた。
私に問いかけたり、自問自答したりしながら、それは楽しそうに。
私は一緒にいてほしくて、ゆっくりと食べるようにした。
下の名前をきいていなかったというと
「今更ですが、
またしてもいたずらっ子の笑みで、美沙さんはそう言った。
「なんだかお姉ちゃんみたい」
そんな本音が口から漏れ出ているなんて気づかなかったが、美沙さんは心底嬉しいとでもいうように私の頭を撫でた。
「こんな可愛い妹なら大歓迎ですよ」
美沙さんが部屋を出て行って、また暇になった私はどこからか来る寒気に嫌な予感がしていた。
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