第4話
昨日の事を思い出すと少し恥ずかしさがある。流石に妹や親の前で高校生にもなって泣くなんて、恥ずかしい限りである。
しかし、それでも「まぁ良いか」と思えてしまうのはきっと信頼していると言うことなのだろう。
「……これ以上考えるのはやめよう。恥ずかしいさしか出てこないから。」
現在、別の事を考えるべく外出しているのだが。特にすることもなく何かをする気にもなれずただただ、この真っ昼間から歩き回っている。
正直言って定時制はバイトをしていないと朝から夕方まで暇すぎる。中学の頃は昼間早く帰りたいしか思っていなかったが。今となっては何もすることがなくて暇すぎる。
「……バイトでも始めるかな。」
そう呟いた瞬間、後ろからいきなり肩を掴まれた。
それに驚き直ぐに肩から手を払い除けて後ろを振り向くとそこには手を押さえながら苦笑いをする薫さんがいた。
「か、薫さん?なにやってるんですか?」
「そんなに強く払い除けることないだろ?」
まぁ確かに強く叩きすぎた気がするけど、それでもいきなり掴まれたらビックリするし薫さんも悪いと思うんですけどね。
それよりもだ。考えながら歩いていたからか、いつの間にか橋本サイクルの前まで歩いてきていた。
「そんなことよりもさっきバイトとか聞こえたような気がしたんだがな。」
………聞こえてたのか。いや、そんなことよりも今はどうやって逃げるかを考えた方がいい。もし、このまま春さんの元に連れてかれるようなことがあれば俺は……確実に終わる。
そう思った途端俺は直ぐ様振り返り走り出す、しかし走り出した瞬間目の前には。
「ハロ~!新人君」
ニヤリと笑っていた春さんが車イスに乗っていた。その時、心の中で思ったことがある。
ああ、終わった。その言葉だけが俺の心の中に酷く響いていた。
そして俺はそのまま春さんと薫さんに捕まり橋本サイクルの事務所へと連れていかれ何故か面接が始まった。
「ええっと、ここにつれてこられた理由は一体なんでしょうか?」
「……何ででしょうね~?」
不適に笑みを浮かべて正面に座る春さん、その後ろの方でコーヒーとお茶を入れながら聞き耳を立てている薫さん、そして質問は質問で返される。
この重たい空気を誰かどうにかしてくれ!ほんとき恐いんですけど。
黙っていると最初に切り出したのは春さんだった。
「ねぇ、悟くん?この前来たときに渡したものがあったわよね。覚えているかしら?」
そう言って春さんは一枚の紙を俺の方に差し出してきた。その紙を受け取り内容を見るとバイト募集中と書いてあった。
やっぱりこれか………。うん、分かっていたことだけどね。
「………バイト募集中ですか。」
「そうだよ。わざわざ悟くんに手渡しで渡したんだよ?これがどういう意味か…わ・か・る・よ・ね!」
この瞬間俺は、頭の中である言葉が浮かび上がってきた。
それは………「終わった」という言葉だった。
「………わかりました。働かせていただきます。」
春さんはそれを聞いた瞬間、「わかればよろしい」と、言って笑顔で俺の肩を叩いた。
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