300年ぶりのタイタン

「point:A from2004へ到着。宇宙服と酸素ボンベを装着した後、一階ロビーへどうぞ」



 AIの無機質な声に誘導され、それぞれは宇宙服やら酸素ボンベやらを付ける。





「ファットさん。この付け方で合ってる?なんか取れそうなんだけど......」


 初めての装着ということもあり、動揺しているマーシェルに、そっとルーカスがきちんとして結びなおした。


「これくらいは覚えておかないと、宇宙へ行くときは酸素が少ないところの方が多いのだから」


 彼の代わりにルーカスがしてあげたのは、忙しいファットにこれ以上仕事を増やしたくないという彼女の粋な計らいであった。



「採取目標は存在していることを前提に水、岩石、生物だな」



 ファットの目が、きりっと研究者らしくなった。そしてルーカスもそれを見て、少し落ち着く素振りを見せる。



「300年たっているから、どうなっているか分からないわね。とりあえずロビーまで行こうか。」


 ルーカスは、みんなを動かすようにしてロビーへ向かった。


 こつこつこつこつ............。そして目の前のドアへ。


「こちら入口です。10秒後ドアが開きます、ご注意ください」


「なんか、緊張してきたね......。思ったより寒そうだし......。防寒技術があるとは言えやっぱり心配だね」



 マーシェルの細い声に彼が話を返す。


「大丈夫だ、今の技術ならば宇宙のどこへでも行ける。海王星だって冥王星だってどこでも......。あとここで業績を残せば、一躍有名人でこの時代の教科書に載ったりもぐへへへ......」



 マーシェルの呆れ顔とともに、少しでも安心した私がバカだったと言わんばかりのルーカス。


「タイタンより、ドア開きます。宇宙船内部に熱風装置作動。」


「プシュ。ガラガラガラガラ......チュイーン」


 重い金属が、レールの上を走りガラガラと音を立てるとそこには極寒の地、タイタンの景色を一望できた。



 最低気温が-180℃といった、人間がそのままでは生活できないような星で、水と生物と岩石を探す。


 宇宙服の中はあたたかく、なんとも思わないかもしれないが、外が寒く透き通っていたのは、ガラスごしでもはっきりと分かった。



「これからだね」


「そうだな......」



 マーシェルとファットが静かな会話を残し、三人は宇宙船を背景にして階段をコツコツ下がるとついに、足を踏み入れた。

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