タイタン道中膝栗毛Ⅲ

「【クソ政府!お前達の命令には従わねえよこの野郎】............いやおいおいおい?なんだこれマーシェル......。まあ、政府がクソなのは分かるけどな、俺の評価だだ下がりじゃないか。」


 ファットのほわっとした顔が曇る。まあ評価を気にするのは彼なりの理由がある。

 

 ファットが地球にいた頃は、バリバリの研究者として皆から信頼されていた。

 大学時代から天文学の研究を始めたころ、彼の友達が「研究者は、総合評価によって左右される」

 と言われ続け、評価を決して下げないように、それだけは守り続けている。



 そして今回、やっとの思いで政府からのタイタンの研究要請が来たのであった。


 そういうこともあり彼は彼なりに自分のプライドもある。だから決して、



「ファットって太っているからfatなの?」



 とか言ってはならない。もし口を零すと、最新技術で殺しにかかってくるはず。

 だが、目の前のことに夢中なるのが得意だから、ちょっとのことでは反応しないはずだ。


 なんやかんやあり、すなわち、矛盾が多い人間である。そして彼の顔は曇ったままだ。

 すると目を大きくしたマーシェルが、興味津々に彼を見ながら話す。


「ねえねえ、ファットさん! もしかして......ファットって太ってるからfatなの??」



「............」




 こいつ。ついに言ってしまいました。

 どうやら今回は沈黙で終わり、殺人鬼具・・は作動しなかった模様。


「命拾いをしたわね、マーシェル」

 ルーカスの冷淡な声がした。

 こんなふうに、マーシェルも典型的なバカ正直で、空気を読むことはまずない。

 逆に言うと、そこが彼女のチャームポイントなのか。


 どうやら、そんな天然な彼女がここにいる理由は、過去に「未来の手引き」として作文を作らないといけないからだとか。

 しかしほぼお荷物状態で、テレビを見てただ宇宙旅行を楽しんでいるだけである。



 そして大きな窓を眺め、ひとりでにぶつぶつと喋っていた人もあり。


「木星はすぐそこだ、ここから土星までどうなるのだろうか。きっちりと隕石認識システムをこの宇宙船は搭載しているのだろうか......」


 彼女の名前はルーカス。いつも冷静な心持ちを目指しているが、案外中身は心配性。ファットの秘書として、ここに乗ってきた。

 けどこれは研究だから、秘書というかアシスタントというか。

 なんやかんや二人を軽蔑しているように見えるが、それも彼女なりのコミュニケーションである。


「この宇宙船、本当にボロいなあ......。飼い主に似たのか?? あのファットに」


 彼女の出す言葉は辛辣で、対話するとメンタルが鍛えられる。

 もしかすると、いろいろな方面からみるとこの宇宙船より、彼女のほうが「有能」なのでは......と。



 髪が短く服も自由気ままで活発な女の子のマーシェル、起伏が激しく他に意外な一面を持つファット。そしてトゲトゲのアシスタントである、ルーカス。


 この三人とともに、タイタンへ目指す。

 あの未開拓の地へ......。


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