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丹堂妙乃様へ。
拝啓。先日は、素敵なお手紙をありがとうございました。
そのお返事は、やはり同じように手紙に認めるのが良いと思い、筆を取っています。
それから、「眠毬」について貴女に知ってほしいことがあります。
「眠毬」は、未言という造語の一つだということです。
未言とは、未だ言葉にあらざるなり。まだ言葉があてはめられてなかった物事に、言葉を与えていった人がいたのです。
その人が作った未言は、三千語にも及んだそうです。この手紙と一緒にお渡した未言字引には、その一部が収録されています。
未言は、とても素敵です。ある人は「言葉よりも言葉らしい」と評したといいますし、またある人は「民話の世界の語りのはじまるところにいる」と言い、私の祖母は「この限りなく広い世界を編み出しているのは、私たちの口からこぼれ出るたった一片の「ことば」たちなのだ」と教えてくれました。
すべて、未言に触れ、未言を生み出した未言屋店主という人物と出会って、初めて生じた想いだったでしょう。
未言屋店主は、こう言ったらしいです。「もし、自分の胸にある想いや、自分が体験した感動が、既存の言葉になかったら、新しく言葉を創ればいい。言葉はそうやって豊かになってきたんだから」と。
私はこの考えがとても素敵で、もっともっと多くの人に知ってほしいと願っています。
きっと貴女は、未言を好きになってくださる方だと感じましたので、この本をお貸しします。
次の機会に、感想を聞かせてください。敬具。
三栗隆文
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