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立夏とは保育園より前からの物心ついた頃からの幼馴染だった。といってもこの島の同い年の約四分の一は幼稚園・保育園くらいからの幼馴染になる。高校進学で離れたり新たに出会うくらいしか人の入れ替わりがないからだ。
幼馴染でも当然馬が合わなくて疎遠になった奴もいるから幼馴染全員が仲言い訳ではないが、立夏は男女関係なく幼馴染や高校から知り合った奴含めてもかなり仲はいい方だと思う。お互いの性別など気にせず気兼ねなく何でも話せるのは多分立夏くらいだし、逆を言えば幼馴染でも他の女子には何となく気を使う。だから今日も立夏に話を聞いてくれと声をかけた。
✽✽✽
煩いくらいの蝉の声と絡み付くような暑さ、行きとは違う意味で重くのしかかる。
悪いのは自分、そんなことはわかってる。恋愛対象として立夏を見たことなかったのは事実だけどもう少し気の利いた言い方が出来たはずだ。ただ誰かに話を聞いてほしかった。
『……なん?』
繋がるなりいつも通りの気怠そうな声。こいつに電話をかけてもしもしと返ってきたことがあるだろうか。
「あのさ、今から出てこれん?話聞いてほしいんやけど」
『あー?俺ら一応受験生やぞ。お前に構って外出てる暇ありゃあ勉強するわ』
「辛辣やなぁ相変わらず」
『いや別に電話で話せばええやろ、というか外か?セミうるさい』
塩だけど良い奴、田上悠も随分と長い付き合いにある。
「すまんなぁ、もうちょいで家やし待ってや、……リッカに告られたけど振った」
周りに誰もいないことを確認して口に出すと現実味が増した気がした。さっき以上の罪悪感が肩にのしかかる。
『知っとる』
「は?」
『いやだから知っとる。』
「何を……」
『淡島がお前のこと好きなんも今さっきお前に振られたんも』
想定外の答えに足が止まる。電話の向こうの悠の声以外のあんなに煩かった蝉の声も波の音も聞こえなくなる。
『見てりゃわかるやろ、淡島がお前のこと好きなん。さっきすれ違った時泣いとったしそういうことなんやろって察しつくし』
「泣い…てた…」
転けても怒られても負けても何があっても泣かない。あいつの最後の涙を見たのは記憶に残っていないほど前。
そんな立夏を俺は泣かせた、傷付けた。取り返しのつかない事をした。足がガクガクと震え出す。
「何があったのかお前の口からちゃんと話してみろよ、仕方ないし聞いたる」
呆然と立ち尽くす俺の前には真剣な眼差しの悠がいた。
鼓動を聞け 夏切きはる @kiharu_kasethu
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