第25話 絵師

ヤマさんとは、店を辞めてからは、1度しか会ってない。


ヤマさんが『絵図』の上の『駒』を動かし始めた頃に

私は退店を決めたので、途中経過は見ていた。


例の、

久美ちゃんに『もう一稼ぎしてもらう』

あけみちゃんには『踊ってもらう』

私には『まぁ、ノンビリ見てな』との事だったからだ。


ヤマさんが、私から、あけみちゃんに徐々に指名を変えていったと同時に

久美ちゃんの売上が上がり始めたのだ。

久美ちゃんとヤマさんは金でしか繋がっておらず、

それを1度捨てられている久美ちゃんは、よく理解していた。

未練たっぷりだったので、また捨てられるのはイヤだったのだろう。

目の前で新たな『金蔓』として、

あけみちゃんにロックオンした負けられない、とでも思ったのかもしれない。

落ちていた売り上げを挽回し、ランキングも復活しつつあった。

そして深夜の豪遊も辞めたのだ。


一方のあけみちゃんは、ヤマさんに指名されると、必ず私に場内を入れた。

たぶん、ヤマさんの入れ知恵だろう。

久美ちゃんが席に来れなくなるからだ。

あけみちゃんは私に勝手に恩を感じていたので

喜んで場内を入れてくれた。

ヤマさんは、ネジ君も扱っていた『品物』を

あけみちゃんに『お菓子』のように与え始めた。

私にも時々くれたが、以前ほどの興味はなくなっていたので

時々で構わなかったし、ヤマさんも積極的には勧めなかった。

あけみちゃんは『お菓子』が大好物にになり

『品物』を買うためにガンガン働き、

安全に届けてもらうために、ヤマさんの飲み代まで負担しだした。


オモシロイ程に、ヤマさんが描いた通りに物事が進んでいた。

私は何となくだが、この2人をヤマさんが『駒』にした理由が

判った気がしていた。

営業スタイルが似ているのだ。

どちらも、『趣味と実益を兼ねた枕営業』が得意だった。

寝て金を貰う事に異論も否定もないし

『実益を得る枕』だけならした事はある。

私は、それを『営業』に繋げる自信はなかったので

『営業』に『枕』は使えなかっただけだ。

私は、どちらかと言えば淡泊な方で、趣味と言えるほど好きでもなかった。

だが、あけみちゃんも久美ちゃんも

確実に『趣味と実益』を兼ね備え『営業』に繋がっていた。

なので、バンバン小遣いも入る。

売上のランキング的には私の方が上だったが、

『小遣いも含めた稼ぎ』だったら、彼女たちの方が上だろう。


私は、最後まで見届けず辞めてしまったので

この後どうなったかは知らない。


ヤマさんに最後に会った日、私は、それが最後になるとは思っていなかった。

私は、最大の疑問であった『私もヤマさんの駒なのか?』と聞いた。

笑いながら『違う』と言った。

『自分の絵図通りに動いてるのを自慢しながら見て楽しむ相手も必要だろう』と。

『雨月は、オモシロイ話相手だよ』と。

結局、会ったのはこれが最後になってしまったので、

本音か嘘かは判らずじまいだ。

『駒にするほどの価値もなかった』

と言うのが、案外と本音だったのかもしれない。


会うのが最後になってしまった理由は高橋君だった。


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