動物園の死闘 6

 邪魔だ、と無機質な声でフリングスが言い、僕の喉元に両手を伸ばす。ぐえっ、と僕はひしゃげた声をあげた。

 いきなり首を絞めてくるなんて。想像しなかった攻撃性と異常な握力に動転する。

 彼の手を振りほどこうともがくが、まったくおよばない。足を蹴ったがまるで電柱のようだった。びくともしない。なんなんだ、こいつ。


 視界が暗くなる――まずい、コクーンの夢で死ねば、設計上の不具合から現実の死につながる。ログアウトで脱出しなければ――だめだ、彼女はどうなる。再ログインまでには時間を要する。その間にフリングスがなにをしでかすか――というか、なぜ彼女は逃げない?


 血のめぐらない頭で考え、必死に抵抗する間も、喉を絞める手は緩まなかった。初めて対峙する明確な殺意に僕は恐怖した。

 ……いけない……意識が朦朧と……して……き……


 どんっ、という衝撃が体に加わった。


 全身が投げ出され、濡れた地面に転がる。一瞬、なにが起きたのかわからなかった。

 咳き込みながら体を起こすと、フリングスとマリーも同じように転倒していた。そうか、彼女が体当たりをして。


「マリー、ログアウトだ!」「できないの!」


 とっさに叫んだ僕に、彼女は眉根を寄せ声を張りあげた。ログアウトできない・・・・・・・・・

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