マリーの異変 5

 マリーの顔つきは翌日以降も変わらなかった。というより日ごとに深刻さを増しているように見えた。

 友達の女子の何人かが、どうしたのかと尋ねていたけど、彼女はわけを語ろうとしなかった。

 悪友のビシーは、からかい半分、本気半分で、倦怠期かと僕に聞いた。僕は、彼女がどうしたのかさっぱりわからない、と首を振った。


 彼女は気のたるみを先生に指摘されることが増えた。ときどき隣の席をうかがうと、ノートのとりかたが彼女らしくない粗雑さだ。よくわからない言葉や図の落書きも散見した。

 ソフィア先生も心配したのか、彼女を職員室に呼び出したこともあった。あとで先生に尋ねてみたけど、やはり彼女は口が重くろくに話を引き出せなかったそうだ。逆に先生から、なにか知っていることはないかと聞かれた。眼鏡の奥の目を曇らせ、かなり案じている様子だった。


 これまでもさほど校内で行動をともにしていたわけではない僕たちは、先日来、ほとんど接点をなくしていた。

 代わりにまとわりつくようになったのがプライだ。

 どこからともなく現れては僕にからんでくる。三年生と二年生は階が違うのに。今まで以上に強引さが目だつ。

 彼女は「マリー先輩とうまくいってないそうですね。寂しくないですか? あたしとデートしましょうよ。あたしのこと、マリー先輩の代わりにしてもらって全然いいですよ」だなんて平気で言ってくる。僕をなんだと思ってるんだ。

 そんな節操のない男子じゃない、ときっぱり断った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る