心弾む夜 5
「こんばんは」
リビングの出入口から意外な声が聞こえて、僕たち子供はいっせいにそちらを振り向いた。
「えっ、お母さんっ? お父さんっ?」
マリーが口に手を当て声をあげる。叔母さんと、そのあとに続いて叔父さんが現れた。
「あ、叔母さんと叔父さんだ」「お母さんたちどうしたのー?」
グミとミリーもゲームを放り出して、リビングに入ってくるふたりを見ている。
驚いた。叔父さん夫婦がそろって来るなんて。
叔母さんと叔父さんのどちらかがうちに来ることはたまにあるけれど、ふたり同時はほぼ皆無。船の異常時に備えて、大人は常にひとりは残る決まりのはず。船団の全員が片方の船に集まるなんて、小さい頃に一度あったような気がするだけだ。
「やだ、連れ戻しに来たの?」身を引くマリーに、叔母さんは首を横に振った。
「お呼ばれされたのよ」
「そう、私たちがご招待したの」叔母さんたちとは反対側、ダイニングから母さんが出てきて言った。「今夜はお祝いのパーティーをしましょうって」
「パーティー?」僕たちは口々に聞き返した。
「ええ。私たちはコクーンの制限で傷つき、傷つけあってしまった。その痛みを洗い流し、区切りをつけ、元の私たちに戻れることを祝うの」
「それ素敵!」マリーが歓声をあげた。グミやミリーも「面白そう」と色めきだっている。
「でも、向こうの船を無人にして大丈夫なの?」僕の疑問に叔父さんが答えた。
「警戒レベルをあげてある。ある程度まで俺に近い判断を下せる。もちろんこれも持ってきている」そう言って小型タブレットをポケットから出してみせた。
「それじゃあキッチンを借りるわよ」叔母さんがはりきってダイニングに向かう。
「私、手伝う」「僕も」マリーと僕が立ち上がると母さんが手で制した。
「あなたたちはいいわ。今度の件は、私たち大人の判断ミスが招いたことよ。ささやかではあるけれど罪滅ぼしをさせてちょうだい」
「そう、子供は遊んでなさい。あなたはしっかり働いてもらうわよ」
叔母さんは叔父さんを引き連れてダイニングに乗り込む。
僕とマリーは顔を見あわせ、甘えるのが子供の役割だ、と一致した。
そして、中断している弟、妹たちのゲームへの乱入についても。
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