閉じられた宇宙船《ふね》

12 忍び寄る不穏はまず子供たちに

忍び寄る不穏はまず子供たちに 1

 最初に様子がおかしくなったのはグミだった。


 コクーンを制限されて二週間ほどたった頃から、態度の悪さが見えはじめた。

 勉強をさぼろうとする回数が増え、注意すると口答えをしたりうっとうしそうな顔で悪態をつく。

 母さんに叱られることも増えた。挨拶やあと片づけをしない、すぐへりくつをこねる、夜ふかしをする。今までは小言にも比較的従っていたのに、反抗的な態度が目だつようになった。

 ゲームをしているときも、うまくいかないことがあるたびにいらつき、ときに大声も出した。


 ミリーともよくケンカをした。コクーンの制限以来、以前に比べて仲睦まじく会話するようになったと思っていたのに、このところ電話で言いあいばかりしているようだ。


「ばーかばーか、悔しかったらこっちまで来てみろよ。来れないくせに。黙れ、このブース」


 グミはがちゃ切りで通話を終わらせた。後ろで聞いていた母さんが説教しようとしたけど、グミは「どうせあっちの船にはもう行けないんだろ。あんなブスと結婚せずに済んでよかった」と捨てゼリフを吐いて自分の部屋に閉じこもった。


 グミだけでなく、口論していたミリーも似たような状況らしい。マリーや母さんの話では、ミリーもだいぶ電話で乱暴な言葉づかいをしているそうだ。

 日常の生活も然り。言うことを聞かなかったり、姉と絶えずケンカしたり、よくかりかりしたり、泣き虫になったり。叔母さんもほとほと困っているという。


 やがてその異変はマリーにまで表れるようになった。

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