せいれいのこえ

 時の精霊が住まうという洞窟の奥へと進むと、やがて祭壇のような場所へと到着した。


 待っていた人物は、聞きなれた声で呼びかけてきた。


「ようやく、ここへたどり着いたのですね。選ばれし者よ」


「その声は……」


 それは、村から旅立つきっかけとなった声。旅の間も、幾度となく頭の中に聞こえてきては、ピンチを救ってくれた声。さらさらと流れる小川のような、美しく透き通った声だった。


「あなたが、僕をずっと助けてくれていた、精霊さまなのですか?」


「ええ。ようやく会えましたね」


 旅人はあまりのことに、言葉を失った。


「ふふふ。そうですよ。時の精霊は、あなたが今こうして確認した通り、異常にカワイイ声が出せる汚ぇジジイです」

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