朽ち果てた剣

 代々、伝説の武具を守ってきたという村の長は、錆に覆われて赤茶けた色の剣を私に差し出した。


 私は手に取り、それを眺める。どう見ても今携えている剣よりもみずぼらしい。


「このぼろぼろの剣が…、伝説の武具だというのですか……」


「そうじゃ」


 年月は恐ろしい。稀代の名剣をもこのような姿にしてしまうのか。


「教えてください。どうしたらこれを元の姿に戻せるのですか」


 樹海の奥にある泉に浸す、灼熱の火口に投げ込む。どんな方法でもやり遂げてみせよう。


「すまん。そのような方法はない」


「そんな……。もう取り返しのつかない程の劣化だというのですか? 手遅れであると……」


 うろたえる私に、村長は強く言い放った。


「それは、もともとそういうのじゃ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る