モブ中のモブ

 ありふれた村の娘といった出で立ちの少女は、にこやかに言った。


「ようこそ、旅のかた! あなたもきっと名物の滝を見にいらしたのね! ここは村人みんなが顔見知りみたいな小さな村だけど、ゆっくりしていってくださいね!」


「はあ……。ご親切にどうも」


 自分も生まれた時から同じ村に住んでいるということを、男は言い出せなかった。

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