冥王の未練

 冥府の王は言いました。


「オルフェウスよ、見事な竪琴の音色であった。そなたの妻は返そう。だが、よいかオルフェウスよ。地上に出るまでは、絶対に、絶対に妻の方を振り返ってはならぬぞ?」


 オルフェウスは答えました。


「あの、もうとっくに地上でてるんで、そろそろ付いてこないでもらえます?」


 冥府の王は言いました。


「オルフェウスよ。ほら、ひょっとしたら忘れ物とかあるかもしれないし、いったん地獄に戻ってみるのはどうだ?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る