ハロウィンの国の、ハロウィン

工藤 流優空

ハロウィンの国

 ハロウィン。古くは古代ケルトの、日本でいうお盆のようなものであったという。いつしかそれが時代の波に飲まれ、現在の形となったそうだ。

 そんなハロウィンの日を心待ちにするものたちがいた。

 ここは、ハロウィンの国。オバケや妖、怪物や異形の者達、想像上の生き物まで、様々な者達が住んでいる。普段、彼らは国の外の世界に出ることはない。そんなことをすればすぐさま彼らの存在は世界中に知らされ、現在のような穏やかな暮らしができなくなるからだ。しかしそんな彼らにも唯一、外の世界に繰り出して良い日があった。それが、ハロウィンなのである。

時差の関係で、ハロウィン外出期間は数日に及ぶ。ハロウィンの国の住人達はこの数日のことを祭りの日と呼び、毎年心待ちにしていた。

 なぜハロウィンの日だけ、彼らが外出を許されるのか、それは改めてここに書き記す必要などないだろう。ハロウィンは仮装をしてお菓子をもらう行事だ。その中に、「本物」がまじっていても、人々はきっと気付かない。ほとんどの人々は、仮装した自分や、一緒に来た友人のことしか眼中にないのだから。


 ハロウィンの国の住人たちはこうして、喜び勇んで今年もまた旅に出る。そうしてきっと、ハロウィンが終わって国に戻った時には、それぞれが旅した国のハロウィンの話をして、来年のハロウィンを心待ちにするのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ハロウィンの国の、ハロウィン 工藤 流優空 @ruku_sousaku

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ