まだまだ書きますイチャラブ話(その3、後半)

「よし、少しだけどうにかなってきたぞ!」

 何故か龍野はチェックアウトを済ませ、ホテルを出てからの事。

 二日目もまた、“ど”が付くストレートな方法を試した。

 龍野の激励などもあって、地上100m程度は何と言う事は無かった。

「しかし、うぅ、この高さは……」

 汐留のとあるビルにある、地上42階のレストランでの食事では、集中する事が出来なかった。

 無理もない。

 まだ克服し始めたばかりである以上、恐怖は拭い去れていないのだ。

 事実、脚は微かに震えていた。

 それでも紙オムツとはいえ、漏らさないのは上出来であるが。

 結局、「龍野が先に感触してから窓を塞ぐように立つ」という方法で、ララを食事に集中させたのであった。


     *


 そして時刻は17:55、場所は羽田空港。

「お待ちしておりました。須王龍野殿下と、ララ・アルマ・バーンスタイン殿下でございますね」

 儀礼用の服装を纏った男に、敬礼で迎えられる事となった龍野とララ。

『こいつは?』

 ヴァイスからの手紙を知らないララは、精神会話で龍野に尋ねる。

『ん? ああ、何とも、“プレゼント”をくれるってさ。ララに』

『私に?』

 龍野ははぐらかしたが、ララは疑念を抱いたままであった。

「では、こちらへ」

 男の案内で、二人はC-2へと向かった。


「って何だこれは!?」

 “プレゼント”の正体に、ララは驚愕した。

「わ、私は……」

「逃げるなよ、ララ」

 龍野がララの両肩を掴み、ぼそりと囁く。

「乗らなければ、シてあげないぜ?」

「~~~ッ!(くそっ、くそっ、くそ……っ!)」

 ララが“いつもの事”を盾に取られ、地団駄を踏む。アスファルトにヒビが入った。

「ほら、ララ。これを舐めろ」

「これは?」

「“恐怖が消える薬”さ(ヴァイスからの飴玉……。その効果、信じるぜ)」

 ララは怪しそうに飴玉を見つめていたが、意を決した様子を見せると、龍野から飴玉を奪って口の中に放り込んだ。

「んっ、甘いな。ピーチ味か」

 それを見届けた龍野は、ララの手を握ってC-2へ乗り込んだ。


「さて、乗り込んだ訳だが……おわっ!?」

 シートに座ったララは、離陸の衝撃に驚愕する。

「ララ」

「何だ?」

「お楽しみは、これからだぜ」

「ふん」

 ララは虚勢を張りながら、脚の震えをこらえていた。


     *


 その10分後。

「うぅ、やっぱり怖いよぉ、龍野ぁ……」

 機体が安定し、立ち上がる事を許可されたララと龍野であるが、やはりララは窓を覗けなかった。

「怖くはないさ(今が使い時だな……!)」

 龍野はキャンドルを置き、火を付ける。

 そしてララの耳元に近づくと、囁いた。

「ララ、昨日と今日の特訓を忘れたのかよ?

 今日は100mくらいまでなら、平気でいられるようになったじゃねえか」

「っ、それは……! しかし、現に私は、脚が……!」

 そう。

 やはり、ガックガクに震えている。

「そうだな、ララ」

 龍野はおもむろに跪くと、ララの両脚をガシッと掴む。

「なら、これでどうだ?」

「ッ……はぁ、はぁ……」

 ごくわずかながら、震えが治まった。

 脚を抑えつけたのではなく、龍野の温もりに、支えられていたのだ。

「頑張れ。今出来るのはこれだけだ」

 それを受け取ったララは、意を決して窓へと歩みを進める。

「くっ……!」

 一歩、二歩。

「うぅっ……!」

「大丈夫だ……!」

 龍野もララの歩みに合わせ、脚を支えている。

「っ、このぉおおおおおッ!」

 そして。

 ララが窓からの景色を覗き見た。

 1秒、2秒、3秒。



 だが、脚の震えがひどくなる事は無かった。



「おっ、ララ?」

「くっ、ふふ、ふははははは!」

 ララの高笑いが、C-2の貨物室内に響き渡った。

 それを聞いた龍野は、そっと手を外す。まるで、子供の自転車の練習で、親がこっそり手を離すように。

「よし、よくやったなララ」

 龍野がララの肩に、手を回す。

「やった、やったぞ龍野! 私は、初めて高高度から眼下の街を見た!」

「そうだな。よく頑張ったな、ララ」

「って、え、龍野?」

 何故か龍野の手が、ララの豊かな果実を揉みしだき始めていた。

「ご褒美だよ」

「ご褒美、って……んあっ、指の腹でスリスリするなぁ……」

「ほら、ちゃんと克服出来たんだから遠慮するなっての」

「っひぃ……まて、脱がすな……」

「やだ」


 そう。

 今更になって、ヴァイスからの“お手伝い”――もとい、飴玉とキャンドル――の効果が出てきたのだ。が。

 ヴァイスはこうなる事を見越して、C-2を待機させていたのだ。

 しかも専門のスタッフは、求められるまでは貨物室に行かないように訓練されている。

 自然と、二人きりの密室が出来るという寸法であった。

 あれよあれよという間に二人はヒートアップし、眼下の景色を眺めながら、互いを求めていた。




「ふあっ、やめ、ろぉ……❤」

 それから十数分後。

 ララを窓際に抑えつけた龍野は、必死になってララを求めていた。

「くぅっ、ばか、らめ……❤」

 ララも抵抗するが、口だけになってしまっている。やはり、飴玉とキャンドルの効果は絶大であった。

 やがて、お互いが限界を迎える。

「………………ッ!」

「ひぁああああああっ!❤(んっ、熱い……また、いっぱい……❤)」

 例によって、けだものと化した二人であった。


     *


 やがて、C-2で一泊した二人は、一度貨物室から投下してもらい(龍野が鎧騎士と化して無事に着地)、葛西臨海公園の“ダイヤと花の大観覧車”前に降りた。

「さて、卒業試験だ」

「ああ」

 二人は意を決し、観覧車に乗り込んだ。




 果たして。

「ふふっ、朝の街もいいものだな、龍野」

「そうだな、ララ」

 初日とは違い、脚は震えず失禁もしなかったララの様子を見た龍野は、満足げであった。

「さて、師匠」

 仮面を外した龍野が、改めてララに向き直る。

「何だ」

「お疲れ様でした。これで今日からは、どんな高所へ行っても大丈夫です」

「ふふっ、ありがとう」

 かくして、無事に“特訓”は終わったのであった。


 しかし、龍野と一緒にいる状態で高所に行った場合のみ、欲情するようになってしまった。

 その結果、早くも第二子がララの体に宿ることとなってしまったのだが、それはまた別の話である。



作者たちの裏話


ヴァイス

「終わりましたわ」


ブランシュ

「叔母様、これでもう、高所恐怖症に悩まされる事はありませんわ」


グレイス

「ええ。それに、叔母様には須王卿という立派な騎士がいらっしゃるではありませんか」


ヴァイス

「いざとなったら、龍野君にはララ殿下の元へ行ってもらいますわ」


ブランシュ

「そういう訳ですから、安心して高所へ行ってらっしゃいませ」


グレイス

「万が一脚が震えて失禁されたら……じゅるり。その時は、須王卿に鎮めていただけるはずですわ、うふふ」


ヴァイス

「ともあれ、これで万事解決、と」


ブランシュ

「それにしても、最後の幕引きは驚愕でしたわね」


グレイス

「『高所恐怖症』は完治せず、『命の危機を感じる』ですか……」


ヴァイス

「だからこそ、第二子を……うふふふっ」


ブランシュ

「とは言っても、ヴァイスシルト殿下でしたら、受け入れてくださるでしょうね」


グレイス

「ですから、安心してお産みくださいませ」


三人

「「では、ごきげんよう。うふふふ……」」

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