大輪の花と異国の騎士(後編)

「ふふっ、こうして見ると、かつて悩んでいた私が馬鹿に見えるな。

 ところで龍野、昔さんざん私のコンプレックスを刺激してくれたのだ。今晩干からびる覚悟は出来ているのだろうな?」

 ララは恨めしそうな言葉を龍野に浴びせつつも、嬉しげな様子で、少しずつ龍野をいたぶっていた。

「……ッ」

 時に潰し、時にこすり付け、時に沈める。

 龍野にとっての数ヵ月前――ララにとっては数年前の話だが――とは完全に違う、“女の魅力”を存分に用いたものであった。

「ふふ、どうだ? かつて一方的に蹂躙した私に、蹂躙される気分は?」

 そう。

 これまでのララは、龍野にされるがまま、幼い身体からだを貪られていた。

 しかし今のララは、例え一時的と言えど、龍野から優位を奪っていたのだ。

 ちろちろと出され、這ってくるララの舌先、そして眼前の巨大な果実。

 龍野もまた、ララの“あらゆる”魅力に屈しそうになっていた。

「くぅっ……」

「ん、何だ龍野? もう屈しそうなのか?」

 龍野の様子が変わった事に気づいたララは、果実を揺らす手を止めた。

「こんなもので暴発されては困るな。に本分を果たさせてやるべきだろう、ふふ」

 ゆっくりと龍野を解放するララ。

 だが次の瞬間、驚異的な膂力で龍野を押し倒すと、そのままマウントを取った。

「ほら、お待ちかねのものだぞ……」

 ゆっくりと、龍野を受け入れ始めるララ。

 そして限界まで龍野を受け入れた次の瞬間、龍野がララを抱きしめた。

「………………ッ!」

「ひあっ!?」

 ドクンドクンと、龍野の鼓動と熱が直にララに伝わる。

「やって、くれたな……(んっ、熱いな……。この感覚、いつ以来に味わったんだか)」

 だが、ララもされるがままではない。

「まだ、私は満足していないぞ? ふふっ」

 ララもまた、龍野にされた事を返し始める。

 いつしか、お互いがお互いを貪ろうと、必死になっていた。

「ふあっ、そこはぁ」

 と、龍野の手が果実だけではなく、ささやかに主張するをも摘まんでいた。

こりゃこらっ、吸うな馬鹿者ぉ!」

 抗議の声を上げるララだが、両腕は龍野の頭をがっちりと押さえつけていた。

 最早まともな意識は無く、二人はただ、本能からの衝動だけで動いていた。

「…………」

 龍野の表情が、苦しそうになる。

「んっ、そろそろ、だな?」

 ララの問いかけに肯定するかのように、アップテンポになっていく。

「いいぞ、こい……ッ!」

 ララが痺れるような感覚を覚え、龍野を強く抱きしめる。

「~~~~~ッ!」

 強く体を震わせ、龍野の唇を奪って声をこらえる。

 と、その直後――


「………………!」


 龍野もまた、ララの唇を貪ったのであった。


     *


「まったく、お前という奴は。龍野」

 更に三時間後、ララは龍野にしがみつきながら囁く。

「ずっと一緒になりながら、十度もこらえきれなくなるとはな。もう溢れているというのに、それでも満足しないとは……」

「師匠、すんませんした。体質なんです」

「わかってる、前もここまで刻み付けられたのだからな。

 ああもう、お前とくっつくしか道が無くなったぞ。どう責任取ってくれるのだ、ああ?」

 いたずらっぽく笑いながら、果実を押し付けるララ。

 龍野は戸惑いつつも、ハッキリと返した。

「だったら師匠。ヴァレンティアに来ちゃいましょうよ」

「というと?」


「俺とみんなで、過ごそうって事です。一緒に」


 真顔で返した龍野に、ララは笑いながら続けた。

「流石私の弟子だ、豪快だな! いいだろう、その話乗った。ところで龍野。皇室警護親衛隊の枠が一つ、空いてるぞ」

「師匠、いえ隊長直々のスカウトとは恐縮ですね。ただ、俺はヴァレンティアの……」

「馬鹿者」

「え?」

「私達の子供についての話だ。みっちり鍛えて、入隊させ入れてやろうと思うのさ。まあ、お前の子供なら大歓迎だがな」

「師匠、貴女も大分豪快ですね」

「そういう性分だからな。

 さて、まだ朝は遠いぞ? 覚悟しろ、龍野!」

「ちょ、師匠!?」

「干からびる覚悟は出来ているのだろう? ふふふ」

「っ……やって、やりますよ!」

 まだまだ二人の夜は、空けそうになかった。

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