蕾と異国の騎士(後編)
ぴちゃりぴちゃりと、水のような音が部屋に響く。
「ふふ、どうだ……?」
「……ッ!」
千年もの経験の蓄積は、“初めて”とは思えない程の素晴らしさであった。
的確に刺激され、龍野の表情が我慢の様子を見せる。
「っ、師匠!」
と、たまりかねた龍野が叫んだ。びくりと、ララが体を震わせる。
「俺ばっかりイイ目を見させてもらうんじゃ、師匠に悪いですよ。えいっ!」
龍野はララをベッドに押し倒すと、先ほどまでララがララがしていたのと同様の事を始めた。
「んんんっ!」
今度はララが我慢の表情を浮かべる。
こみ上げる声を殺そうと、手を口元に当てていた。
「ちょ、やめ……んんっ❤」
ララの懇願を無視し、龍野は一方的に続ける。
と、ララの腰がガクンと動いた。
「ぷはっ……ん、師匠?」
「……ぅ……れ」
「えっ?」
か細いララの声だが、龍野には聞こえなかった。
ララはキッと龍野を睨むと、はっきりとこう告げた。
「私をお前の男にしてくれ!」
潤んだ瞳で、ここまで真っ直ぐ見据えられた龍野。
少しの逡巡。
(……わかったよ、ヴァイス)
しかし主が笑顔で親指を立てている姿しか思い浮かべられなかった龍野は、ララを見つめ返すと、同じくはっきりと答えた。
「わかりましたよ、師匠。いえ、ララ」
「……ありがとう、龍野」
ララは両腕を広げ、龍野を精一杯包み込もうとする。
「きてくれ」
「ああ」
そして、影は溶けあった。
ぎしり、ぎしりという音とララの何かを押し殺す声が、部屋を支配していた。
「ふあっ、限界だ……ああああっ!」
ララの悲鳴が、部屋に響く。
けれど龍野は、ララに構わず、ひたすら動いていた。
「まっ待て、りゅう、や……!」
何かを察知したのだろう。ララが必死な声を上げながら、龍野の腕を握りしめる。
「そ、それ、は……」
それでも龍野は、止まらなかった。既に本能だけで動いていた。
そして――
「………………!」
「……ッ!」
お互いがお互いを強く抱きしめる。
その顔は、真っ赤に染まっていた。
*
「うぅ……」
更に三時間後。
ララは「納得いかない」と言わんばかりの様子で、しょげていた。
「いや、あの、ララ師匠。悪かったですって……」
「違う! そうではない。そうではないのだ、龍野」
龍野が詫びようとするが、ララはすぐに止める。
「こんな事を言うのは恥ずかしいのだが……。私は、お前全体を受け止めたかった」
「はい」
ララは泣きそうな目になると、更に続けた。
「しかしな! 私がこんな体なばかりに、お前を半分しか受け入れられなかった!」
「あの、俺は気にしてませんって……」
「私が気にしてるのだ大馬鹿者!」
言葉だけでビンタが出来そうな勢いで、ララは龍野を叱りつける。
「私が未熟なばかりに……ぐすっ……」
感情は治まることを知らず、ララが泣き始める。
龍野は黙って、ララを抱きしめた。
「決めたぞ、龍野」
「はい」
ひとしきり、ララが泣いた後。
「私は大きくなったら、必ずこの時空間に来て、もう一度お前にシてもらう!」
人差し指をびしりと突き付け、ララは宣誓する。
そう、今度こそ、満足する為に。
「わかりましたよ、師匠。俺ももっと鍛えてますから、いろんな意味で立派になった俺に、安心して包まれてください。俺もちゃんと、師匠を包みますから」
「その約束、
さあ、今からはいつも通りの師匠と弟子だ!」
「はい、師匠!」
ララはそれだけ告げると、ドレスを纏い始めたのであった。
今日もまた、龍野の戦いの腕を磨く為に。
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