新学期です。

 こんにちは、ミヤコです。

 ついに新学期が始まってしまいました。


「ミヤコぉー!」


 タックルです。

 なんでいつもレイアは全力でこちらへ向かってくるんだ。もしかすると前世は闘牛だったのか?

 黒板を綺麗にし終えて席につこうとしていた私は、とりあえずそれをかわします。

 レイアは勢いそのままに、バタバタと教室の外へと出て行きました。

 そしてタイミングのいいことに、ちょうど入ってきたクラスメイトが扉をそのまま閉めます。

 ざまあ!


「なんで避けるのかなぁ!?」


 ガラガラバーンと私の元へ舞い戻った牛が大声で何か喚いています。


「そういうの危ないからやめようよ。ところで何か用?」

「一緒に帰ろうよ!」

「私日直だからすぐには無理だよ」


 それを聞いたレイアは何か思いついたようで、腰に手を当ててふはははと笑っています。


「私が日直だ! 今から私が日直になろう!」


 こいつは何を言っているんだ。

 それを無視しておきたかったのですが、とにかくうるさいので適当に相手をします。


「日直もういるからダメだよ。あとこれ書くだけだから少し待ってて」


 私は今日の出来事を記入しようとパラと日誌を開きます。


「あ、なんだ。あと感想のところだけ埋めれば終わりなんじゃん!」


 すごく嫌な予感しかしません。


「ダメ」

「いいからいいから!」


 何がいいのかわからないので、その声は無視しておきます。

 そしてそこでめげないのがレイアのたちの悪いところです。何か耳元でささやいてきます。


「今日はぁ、つかびれた。ホンマツカビレタ。ホンッッマツカビレタアアアアッ!!」

「やめろ」

「でもお昼のシチューはとても温かった。ヌルカッタァ!」

「ささやきをやめろ」

「そして私はささやきをやめた」

「思いのほか素直か」


 私はその内容をつられて書いてしまいました。赤のボールペンで。


 翌日、『ミヤコさんの意外な一面が見られて嬉しかった』という担任からの赤ペンがついていたとクラスメイトから聞くと、私は教室を飛び出して逃げるレイアを全力で追いかけるのでした。

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