カエデちゃんです。

「……」

「…………」

「………………」


 こんにちは、ミヤコです。

 違います、悟りを開いたわけではありません。

 今目の前にはカエデちゃんが着席をしています。


「カエデちゃん」

「……?」

「昨日席替えしたからそこ。カエデちゃんの席じゃないと思うよ」


 彼女はガタンとその場で席を立ちます。

 でも弾みでどうやら膝に机を受けてしまったみたいです。

 しゃがみこんで小さくうめくその姿には庇護欲をそそられます。


「……ぅぅ」

「大丈夫、カエデちゃん?」


 コクンコクンと首が上下。


「新しい席はわかる?」


 ブルンブルンと首が左右。


「じゃあ案内するから一緒に行こうね」


 すると\パアァァァ/と涙目の表情が明るくなりました。

 カエデちゃんは言葉をあまり発しません。良くて単語くらいです。

 ただ顔には出るみたいなので、見ていれば大体何が言いたいのかはわかります。


「ミヤコ」

「ん、どうしたの?」


 \ババァ~ン/


「数学97点」

「おぉ、すごいね」


 満面のドヤ顔です。

 なでなでわしゃわしゃ。

 なにこのいきもの可愛い。


「そうそう、昨日新しくできたクレープのお」

「どこ」

「えっとね駅前なん」

「行く」


 甘いものの話をするとなるはやで返事をくれます。

 彼女は食べる様子も可愛いのでついつい誘ってしまいます。

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