第16話

つかむことと離すことは、バランスが取られていないといけないらしい。


子供はほんの赤ちゃんの頃にそのバランスを学ぶ。

例えば哺乳瓶を持ってミルクを飲むことと、満足したらポイッてすること。

例えば何かにつかまって立てたら、手を離してみること。


私はつかむことが過剰だ。

子どもの頃からすごい便秘だし。

収入が少ないとえらく不安になる。貯金があったとしても。

長らく「誰にでも長所と短所がある」ってことがわからなくて、すぐに友達になる。そして短所を見つけると「こんな人だとは思わなかった」と勝手にショックを受けて関係性を遠ざける。

別れるのが苦手。子どもの頃に冷蔵庫を買い替えた時、引き取られていく古い冷蔵庫相手に大泣きした。特に愛着があったわけではなくて、そのくらい苦手。

愛情が喉から手が出るほど欲しい。いつも足りない足りないって思っている。どうやら。


どうすれば学べるのかな…と思う。どうすればバランスが取れるようになるのかな。

「感じることはいいこと」の時もそうだった。

どうすればいいのかな…とずっと思っていた。

そうしたら、なんだか腑に落ちる瞬間が来た。

だからきっと、「つかむことと離すこと」をずっと頭に置いていれば、その瞬間が来るんだと思う。

いつになるかな。

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