第11話

私が私として動き出した。

それはすごくいいことだ。

それでも私は止まってしまった。

私は私の親がやっていた教育しか知らない。

私は「一般的な」親がどうやって子供を育てるのかを知らない。

自分の機嫌が悪い時、子供のことがうるさいと感じる時、子供とどう距離をとってどう説明してどうやってやり過ごすのかを知らない。

夫婦の仲がギクシャクした時、恐がる子供をどう安心させるのかを知らない。

私の子供は私の中にいるから、子供にはわからないようにごまかして紛らわせるって方法は使えない。さあ困った。


私は私の中の子供を育てなければいけない。

でもどうやったらまっすぐ育つのか、わからなくなった。

文章は読んでいる。

例えば「感じることはそのまま感じていいと自分に許可を与えよう」と書いてある。どういうことだ?

怒りを感じることは、怖い。また誰かにぶつけてしまいそうで、それなら感じないほうがいいんじゃないかと思う。

孤独を感じることは、悲しい。わざわざ悲しむくらいなら、知らないふりをしてやり過ごしたほうがいいんじゃないかと思う。

わからない。この「わからない」も、本によるとそのまま感じていていいらしい。でもわからないって自分が止まっている感じがして、やっぱりいい気持ちではない。


どうしたもんか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る