第10話

私は、高校生になった。

いやいや。実際の私は大人ですよ。

心の中の私が、高校生。


中学から高校にかけて、私はものすごく勉強する子だった。

だって「勉強」だって言えば親から離れていられるから。部屋にこもっていられるから。

自覚していた。

祖父母も「勉強することはいいことだ」って言っていたし、先生たちも「勉強しろよ」って言っていたし、なんだか世間も勉強することはいいことだって思ってるみたいだし、それなら勉強していればよかろう。と。

勉強していれば、家のことや家族のことを考えなくて済むっていうのも私にとってはすごくよかった。

目標は「県外の、できれば新幹線の距離の、国立大に入ること」

そうすれば家から出られる。そうすれば1人で暮らせる。


一人暮らしをすること。

それは私の人生の中で大きな選択だった。

初めて自分で、喉から手が出るほど欲した選択だった。

そして人生で一番正しい選択だったんだと思う。



心の中の、高校生の私は、やっぱり家を出ることを望んだ。

そうだね。私の家は私にいい影響を与えない。

私の親はきっと一生懸命私を育てたんだろうけど、私にはシンドイ場所だったね。

子供を愛していたけどそれ以上に、家族を自分の思い通りにしたかった親。

子供を愛しているがゆえに、子供に自分の親の代わり、妻の代わりをさせてしまった親。それは一般的に愛とは呼ばないんだけどね。

子供を愛していても、どうやって伝えていいのかわからなかった親。


私の中の私は親に手を振ったし、親も手を振った。

バイバイ、私は私の人生を見つける。帰りたくなるまでは帰らないよ。

バイバイ、とりあえず、産んでくれたことにはありがとうと思おう。

バイバイ、それからここまで食べさせてくれたことにもね。

私は私を、私自身で育てていくよ。

あなたたちには人を育てることは難しかったね。

じゃあね。

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