第2話

自殺未遂をしたことがある。

つい最近の話。


夫の出向について、アメリカにいた。

仕事をやめ、趣味で入っていたサークルをやめ、所属はなし。

時差は15時間。話したい友達はいたけど、気軽に話せる感じではない。

友達と電話しようと思ったら、時差を計算し、予定を合わせ、睡眠時間を調整して(というか、朝の3時とかに起きて)話すしかない。グループラインがたまたま盛り上がるのもほぼ朝方。起きてから参戦しても日本はもう寝ている。


それでも夫がいればと思っていた。甘かった…

夫はゲーム、漫画、動画が好き。世の男性の大半がそうなんだろうけど、結論のないおしゃべりは苦手。私の話に30分付き合うと、飽きるんだな。

私のビザは通称、配偶者ビザ。働いちゃいけないやつ。

昼間は本当にヒマ。

夜になって「やっと帰ってきた!話聞いて!!」とやっても…彼は飽きる。

いや、すっごく頑張って聞いてくれていたんだと思う。仕事で疲れていたのに。

でもどう頑張ってもスマホが気になる、ゲームしたい、今日はあの漫画の発売日だなぁ…で、無意識に何かに手が伸び…

「なんでちゃんと聞いてくれないの!!!」となる。

そんな生活が1年以上。


私は私で、部分的に思考回路がものすごく偏っていて。

ものすごく小さなことで、見捨てられると思ってしまう。

そんなことないって言われてるのに「なんで見捨てるの!」と怒ってしまう。

冷静になって考えれば、彼が疲れてしまうのもよくわかる。

怒られている理由がよくわからなくて、どんどん自信がなくなって、打つ手も打つ手も効果があるようには見えなくて、打つ手が尽きてしまって。

もうどうしようもなく疲れて、たくさんたくさん傷ついて、ついに彼は言った。

「もうオレたち無理だよ」

その日だった。

私は捨てられることを確信してしまって、

もう生きている意味なんてないと思ってしまって、

今こんなに辛いのに、見捨てられる瞬間は耐えられないと思ってしまって、

それならもういっそ、捨てられる前に自分を捨てたくなってしまって、

やってしまった。


そこから先は覚えていない。

でもメールをした記録が残っている。

「これじゃあ死ねないですね。死なせてください。どうやったら死ねますか」

知らない間に入院をしていて、日本に帰ることになって、退院した。


だから、私は治療をしようと思った。

彼をもう苦しめないため。

大切な人を大切にするため。

そして、大切な人が生かしてくれた私を大切にするため。


きっと治療は苦しいけど、これをちゃんと言葉にしておいたらなんとか耐えられるんじゃないかと思う。


今、夫とは離れて暮らしている。

その夫が今日、夢に出てきて私の頭を撫でてくれました。

久しぶりにニコニコ笑っている顔を見れたし、

久しぶりにチュッとほっぺにキスをしたし、


今日はなんだかとても幸せ。

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