悪魔な実験 2

 高校時代、よく泊まりがけで遊びに来る友人が居ました。心霊現象に興味がある彼女は、ちょっと風変わりな子でした。霊感も少しはあったようですが、どちらかと言えばオカルトマニアという感じでした。

 実は彼女が宿泊した夜に、左手があらわれた事がありました。


 勉強机の上に左手が乗っている事に気づいた私は、いつもの如く実験を思いついたのです。

 私は何の説明もせず彼女の右手を掴むと、机の上の左手に重ねて上からぎゅっと押しつけました。

 私には、左手が彼女の右手に押さえつけられているように視えていますが、彼女には、右手を私の左手が押さえつけているようにしか見えていません。「な、何?」と焦る彼女に、私は問いました。

「何か、感じない?」


 結果から言えば、残念ながら何も感じなかったそうです。

 今まさに貴女の右手は、噂の左手を押さえつけているのだよ、と話す私に「嘘ーっ!?」と彼女は嬉しそうに叫んでいました。オカルトマニアの心理は、私には分かりません。

 

 こんな事もありました。

 隣の席の子が物凄い怖がりで、よく実体験を淡々と話して聞かせては嫌がられていたのですが。あまりに怖がりなので、ふと悪戯心が起きまして、

「金縛りに絶対ならないおまじないがあるんだよ」と、こんな方法を教えてみました。


 布団に仰向けに寝たら、部屋天井の四隅の角を順々にじっと見つめてから眠る。見るのはどこからでもOK。


 とても単純な方法だけど、絶対に金縛りにならないよ、と笑顔で教えた私に、彼女はとても喜びました。

 2週間ほど過ぎた頃、彼女が私に嬉しそうに報告してくれました。

「おまじない、凄く効果あるね」

 おまじない? 思い出した私は苦笑いするしかありません。


 あれを毎日やっているのかと問えば、彼女は当然と言わんばかりの態度でやっていると答えます。その答えに薄ら笑いを浮かべた私に、彼女は何かを感じたらしく、「何よ、その悪魔笑い」とビビります。

 良い反応で楽しいなぁ、と思いながら私はボソリと呟きました。

「あれ、金縛りに遭う方法らしいよ」

「───!!!!?」

 ムンクの叫びのような反応の直後、バシバシと叩かれました。いやぁ、痛かった。でも、面白かった。


 本当に金縛りになる方法なのかどうかは、定かではありません。当時、そんな眉唾な噂話はたくさん出回っていました。

 金縛りになると思い込むか、絶対ならないと思い込むかで、同じ事をしても結果は正反対になるという、良い実験でした。

 実験台にされた彼女は、はた迷惑だったでしょうけれど。


 そんな悪魔な実験をしでかす私でしたが、高校時代の友人や先輩にも霊感がある人が居て、浮くこともなく3年間を過ごせました。


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