夢か現か
夢なのか現実なのか定かではない、という経験は誰しもあるかと思います。私の一番古い
その夜、愛用の長座布団に寝かされている私は、高熱を出していました。よく熱を出す子だったので、家族はいつものことという感じで、私を寝かせて台所で夕食を摂っていました。
高熱のせいで頭が痛くて、ぼんやりとした意識の中、食卓を囲む声や音を聞いていたのを覚えています。
寂しくて辛くて苦しくて。その時、ひんやりと冷たい手が、私の額に触れました。
氷のように冷たい手が、額の熱を奪っていきます。ズキズキしていた痛みが薄れ、ゆっくりと額から頭へと撫でるリズムに、気持ち良くなりながらも疑問が浮かびました。
この手は、誰の手だろう?
家族は台所です。私の傍には誰も居ません。何よりも、ひどく冷たい女性の手は、母のふくよかな手とは全く違うものでした。
いったい誰が私に触れているのかと、目を開けようとした瞬間、ビタッと乱暴な小さな手が、私の額を叩くように触ってきました。
「あ、熱下がってるよ!」
聴こえたのは兄の声。目を開けると次兄が私を覗き込んでいました。
この時のことを後から聞いたところ、食卓から見える位置に寝ていた私は、微かに呻きながら眠っていて、傍には誰も居なかったし、何かが視えたりもしなかったそうです。
でも、あの時、熱を奪いながらゆったりと撫でる手を、私は確かに感じていました。
あれはいったい、誰の手だったのでしょうか。
夢だったのでしょうか、現だったのでしょうか。
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