神頼みをしてみた 後編

購入したストラップお守りをスマホにつける。


神にもすがるとは、こういうことなんだなと思いつつ、読書する。


図書館からすでに数冊借りて、積まれてある。


眺めてないで、いい加減読まなくては。


ページを捲って目を通す。


小説を読む気分じゃない。


つぎ。


二冊目に手にしたのは、「365日のWonder ブラウン先生の格言ノート」である。


1月1日から、12月31日まで、各日にちごとに格言が書かれてある。


ひと月ごとに、コラムのような、短編小説のような話が書いてある。


九月が終わったあと。


「親切をえらべ」とサブタイトルが付いている話が書いてある。


お手元の「365日のWonder ブラウン先生の格言ノート」を参照していただくとわかるとおり、親切について書かれてある。


正しいことをするか、親切なことをするか、どちらかを選ぶなら、親切を選べ!


この本の扉をひらいたところにも、書いてあるし、もともとの作品「ワンダー」の本の主題にもなっているものだ。


親切。


あー、親切だ、と思った。


これが、探していた答えだ。


黒龍様、すごい。


もうご利益が来た、思わずはしゃいだのは内緒である。





そう言えばと、振り返ると、恩返しに奔走していたわたしがしてきたことは、まさにそうだったかもしれない。


だれしも自分のために生きることのほうが、正しい生き方だと思う。


もちろん、そんなの人の人生だから、どんな生き方でもしたらいい、と他人はいう。


そんな他人は、自分だけは、隣の人よりは幸せになってやると、自分を大切に生きるものだ。


その生き方が、正しいかどうかは、それはわからない。


わからないけど、経験を積み重ねた記憶から、酸いも甘いも経験しながら、人と出会い、好きになったり嫌いになったり、自分の為を優先して人にかまうことを避けつつ、やりたい仕事をしたり仲良くなったりして家族を作り、日々の営みを暮らしていく。


そういうのが、おおよそ正しい人生なのだろう。


知らないうちに、親切を選んでいた。


だけど、対象者を終えたいま、恩返しは終わったのだ。


終わったのだけれど、人生は終わらない。


これからは名が親切にかわり、対象がもっと広くゆるくなったのだ。


必死になって追われるようにしてきた日々とは、比べ物にならないほど、ゆったりした気持ち。


それでいて、とても気持ちがいい。


おもわず、ありがとう、と口ずさんでいた。


ありがとー、ありがとー、ありがとー、ありがとー、ありがとー、おおきな……





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