第12話 脱走
その後、しばらくは卵を生んでいないことに腹を立てた人間に蹴り殴られる日々が続きました。ニワトリは気力も体力も限界です。
そしてそんなある日のこと。
「さて、こっちももう我慢の限界だ。卵も生まないお前なんかこのまま育てていても餌が無駄になるだけだ。今日、ここで殺して肉にしてやる。最後はちゃんと喰ってやるんだからありがたく思うんだぞ」
そう言って人間は手に持ったナタを振り上げて、そのまま力一杯振り下ろします。
とっさのことでしたが、ニワトリは地面を蹴って駆け出します。ナタの一撃が左肩を削ぎましたが、それでもニワトリは駆け回ります。
「ちょっと、殺すなら早く殺してよ。もうさばく準備してあるんだからさ」
もう一人の人間がそう言いながら小屋のドアを開きました。
「バカ、いま開けるんじゃない!逃げてしまうぞ!」
「え?え?」
チャンス、とばかりにニワトリはドアの隙間から逃げ出しました。
ニワトリは外の世界のことは何も知りません。知っているのは生まれた施設とこの小屋での生活だけ。それでも生きるためにニワトリは駆け続けるのでした。
肩に傷を負い、歩くもの一苦労だったあのニワトリが。
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