第11話 理解に届かない

次の朝からニワトリは小屋の中を走り回り、頻繁に鳴き声を上げることにしました。生まれつき足が弱かったので走るのは結構負担でしたが、このまま殺されるよりはマシです。

「うるさいんだよ!静かにしないと殺すと言っただろ!」

鳴き声を上げる度に人間が怒鳴りつけてきますが、どっちにしろ殺されるのならなるべく長く生きてチャンスをうかがうのがマシです。


それから数日、走り回ったり鳴き声を上げ続けました。

そうしてようやく人間の方も何かに気が付いたようです。

「ねぇ。このニワトリ、あんなに鳴いてるからオスなんじゃないの?」

「そうか。まぁオスでもメスでもどっちでも卵さえ生んでくれればいい」

「うーん、どこかでオスだと卵は生まないって話を聞いたことあったような?」

「お前まで何を言っているんだ?ニワトリと言ったら卵を生むに決まっているだろう。オスとかメスとか関係ない」

「そうだよね。あんたがそう言うなら卵を生むに決まってるんだ」


人間はニワトリのことはオスだと分かったようです。しかし、オスが卵を生まないということは分かっていないようでした。分かっていないどころか、ニワトリなら卵を生むものと信じ込んでしまっている。


これは一体どうすればいいんだろう…。ニワトリは絶望の中で死んだように眠りに落ちました。

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