??年後


「え!? いや、男の手紙にはなんて書いてあったの!? プリン作ったら話してくれるって言ったのメルじゃん!」

「発言と約束は違うんだよ?」

「うわぁ、じいちゃんと似たようなこと言って……あっ、そういえばじいちゃんも似たような話してた。婆ちゃんに出会う前、綺麗な女の人に手紙で……あれ、伝書鳩だったかな? プロポーズしたんだけど、その前に嘘ついた所為で振られちゃったって。アホだよね」

「……さっきの私の話、聞いてたよね?」

「え?」


 とぼけた顔で首を軽く傾げる。目の前の彼は、肝心なところで鈍いところはよりも酷い。


 大繁盛のカフェ・ローズでは今日も暖炉の火が音をたてている。小さく笑いながら、メルはスプーンでプリンをすくった。

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水晶のチョコレート 区院 @rukar

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