Sei nel mio cuore
「あ、おかえりなさーい! 今日はリナルドの好きな
扉を開けると、思わず涎が垂れそうになるほどの肉とソースの香ばしい香りが鼻腔を突き抜けた。
リビングに進むと既にテーブルの上に
背後から近づく気配がして振り返ると、彼女は嬉しそうな表情でワインの瓶を掲げている。
「じゃーん! ぴったりの赤ワインも買ってきたの! おじさんがね、ステーキならこれがいいよ、っておすすめしてくれたの! コノスルっていうんだって」
「飲んだことないワインだな、どれどれ。 チリのワインか」
「ほら、早く食べよ? ご飯が冷めちゃう」
輝かんばかりの愛くるしい笑顔を振りまく彼女に、リナルドは1日の疲れがじわじわと癒やされていくのを感じた。
決して広くはないアパートの一室は、美味しいご飯と彼女に満たされて、天国でもこうはいかないだろうと思うほどである。
「今日も美味しいご飯をありがとうな、ユーリ」
と、唇にキスを落としそうになって、我に返った。
「・・・・・・してくれないの?」
「バカいうんじゃねェ」
代わりに額や頬にキスをすると、くすぐったそうにしているので「まだ慣れねえのか?」とからかうと彼女は顔を真っ赤にして小さく頷いた。
リナルドは彼女の黒髪を一房手にとり、キスを落とす。
「
ふと、脳内にあの本の内容がよぎる。
黒髪に、ぽってりとした赤い唇、愛しい女。
あの男が信じられない、目の前で女が死にゆく様をただじっと見つめているなんて。
誓ったのだ、必ず、どんな手を使っても彼女を死なせやしないと。
そんな決意を露とも知らない彼女はくすくすと笑って、リナルドの額にえいっとデコピンを放った。
「もう、だからユーリじゃないってゆってるでしょ。 ゆ・う・り!
本当に大切な物は隠しておくより、こうして手元におくのが1番なのだ。
Sei nel mio cuore――(彼女は私の宝物)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます