第十七章…「その次の行き先は。」
私は手に持った剣を、晴天の空から射す太陽の日差しに当てる。
汚れはないか…、刃こぼれはないか…、その手に持つ白い剣の状態が気になって仕方ない。
使ったのはほんの一瞬…、状態を悪くするような使い方をした訳じゃないけど、どうしてかその手入れには力が入った。
『フェリスーーッ!』
孤児院のテラスに座っていた私の背中に、フルートが抱き着いてくる。
「ちょっ…。今、刃物を扱ってるから、危ないわ」
「あ…、ごめんなさい」
「わかればいい。どうかした?」
私の注意に反応して、少女はすぐに離れると、私の横に腰掛ける。
---[01]---
「ううん。なんにもない」
「そう」
用事があると思って、フルートの方へと向けた視線を、再び剣の方へと戻す。
「あなたは他の子達と遊ばないの?」
自分の前に広がっている子供達の遊び場、そこから響く楽しそうな音…。
その平和を体現したような音を、私はBGMに作業を進める。
そんな平和の輪の中に、フルートも入ればいいのにと思ったわけだが、少女からは…入らない…という言葉が帰ってきた。
まだ普通の生活と言うモノに慣れないのだろうか。
「私は、フェリスと一緒に居る方がいいの」
「…そう」
好意なのか?
---[02]---
それを向けてもらえるのは、私としては嬉しい事だけど、多人数の輪から距離を取ってしまうのは、心配の種にならなくもない。
強く言う気にもなれないから、それ以上を彼女に要求できなかった。
「その剣は…何?」
「剣?」
「いま持ってる剣、なんかさっきからずっとその剣ばかり見える気がするから」
「あ~…、何…と言われても、私の剣…としか言いようがないかな」
「ん~? でもそれにしては真面目な顔…、他にもフェリスの剣はあるのに」
「…そうなんだけど、他の剣ももちろん大事、でも、なんだかそれ以上にこの剣に対しては力が入っちゃうんだ」
「よくわからない…」
「うん…。かく言う私も、なんでそう思うのかわからないわ。・・・私にはこれを大事にしていた記憶は無いし、そもそも自分のモノだと断言するための証拠を覚えてないの」
---[03]---
「でも、真面目に手入れするだけ大事なんでしょ?」
「そうみたい。不思議な所なのよね。記憶にはないけど、自分にとって大事なモノなんだと感じる部分はあるのよ。だからこうやって入念に手入れをするの」
私はフルートに見えやすいように持ち、剣の汚れを取る様に手ぬぐいを擦りつける。
「キレイな剣だよね」
「ええ」
フルートの言葉に私は頷く。
白く、光に当てればその輝きを増す剣、確かにきれいだ。
でも、その白い剣には、所々に何か染みのように取る事の出来ない汚れも見え、それが綺麗だとしても、これは剣…凶器である事を私に実感させてくる。
黒いような…赤いような…。
---[04]---
その汚れがどうしてついたのかは、私が思っている事とそう離れてはいないはずだ。
「フェリスはせっかくの休みなのに、剣を触ってばかりね」
「休み…と言ってもね。別段やりたい事がある訳でもないし、剣の手入れが落ち着くのなら、それはとても有意義な休息だと思うけど」
「むぅ~…」
私の返答に、体育座りをしつつ、自身の膝に顎をくっつけながら、フルートは頬を膨らませた。
なるほど。
その少女の反応に、フルートが何を求めているのか、それを理解したようなそんな気がする。
「これでも、結構疲れてて…。ごめんね、遊んであげられなくて」
「えっ!? ・・・あ、別にそんなつもりじゃ…」
---[05]---
「それに…、この後、用事もあるから」
「用事?」
「エルンさんと終わった大きな仕事の話をする約束になってるから。あと、彼女が言うには、次の仕事の話もあるとかないとか。まだ未確定の話らしいけど、たぶん許可が下りるだろうって」
「ふ~ん」
「そんな不貞腐れないでよ。仕事に区切りが付いたら、目一杯遊んであげるから…、ね?」
「むぅ~…、なんか、仕事本位な父親が子供をあしらう決まり文句みたい」
「え…」
痛い言い方をするモノだ。
いや…実際に、どうなるか確約の無い口約束である事に違いはないんだけど…。
---[06]---
「ん?」
というか、良いとは言えない過去を持つフルートにしては、しっくりと来る例え方だな。
「どうかした?」
「え? あ~、あなたが家族の事をにおわせる話をするの、初めてだなって」
「・・・、あ…。今のは忘れて」
「まぁあなたがそう言うのなら、私はこれ以上話を掘るつもりはないけど」
かの国の逃亡者達と一緒に逃げてきた少女、向こうでどういう生活をしてきたのか、私はまだ知らないけど、話したくないという雰囲気を常に纏っているかのように思える彼女に対して、私から詮索するつもりにはなれかった。
良い生活をしてこれなかったからこそ、思い出したくない記憶の方が、抱えているモノの中には多いだろう。
---[07]---
でも、ポロッとこぼれ出た言葉だとしても、出すまいと抱え込んできたモノを出してくれた事、それ自体は正直嬉しいと思える。
初めて会った時から、好意を寄せてくれていたとしても、そこにちゃんとした信頼関係があるかどうかはわからなかった。
短い期間とはいえ、リアルの距離ではなく、心の距離を少しは縮めてくれた…かな?
『いい天気の下でお話をしている所悪いけど、いいかな?』
そんなちょっとした実感できる幸せを感じていると、噂をすれば何とやら…エルンが姿を見せた。
その隣には、トフラとヴァージットの姿もある。
「向こうでの話は終わったの?」
「終わったよぉ~。一応、こっちでできる事はやってきたつもりだ。それで…だ。向こうで良い返事が来ることを前提に、その辺についての話を交えながら、話をしようじゃないか。その有意義な情報を使えば、より返事が確実なモノになるかも。だからこそ、ヴァージット君を連れてきた訳だし、聞きたい事はいっぱいだ。待たせてごめんね」
---[08]---
「いえ」
私は手入れをしていた剣を鞘へとしまい、立ち上がる。
「じゃあフルート、私は少し話をしてくるから、後でね」
「…うん、待ってる」
少女の幾ばくかの間を気にする事なく、私はエルン達との会話をするため、彼女の部屋へと向かった。
場所をエルンの部屋へと変え、用意された椅子に全員が腰掛けた所で、話は始まった。
机を挟んで、私とヴァージット、エルンとトフラという形で並んで向かい合う。
話を聞く…聴取をするという事で、どこかドラマで見た警察の尋問のような印象を頭に浮かび、私を緊張感が襲った。
---[09]---
「あの怪物の話をするのなら、ここよりも軍の施設の方へ行った方がいいんじゃ…」
背筋を伸ばし、まるで初めての面接試験に臨む学生のような姿勢を取るヴァージットが、苦笑いを浮かべながら口を開いた。
「いやぁ~、表向きは確かに、この前の悪魔の一件の聴取となっているけど、私情を挟む部分があってねぇ~。向こうで話をするよりもこちらの方がやりやすいんだぁ~」
「そう…ですか」
私も十分に緊張してしまっているけど、ヴァージットはそんな私の遥か上を行っているようだ。
心なしか、脂汗で額を光らせているようにも見える。
「というか、詳しく聞きたいんだけどさ。フェリ君は、いつ彼と仲良くなったわけぇ~? 君、私と違って記憶を操作されてなかったよねぇ?」
---[10]---
エルンに不審そうな顔を向けられるのは当然だ。
記憶が無くなってないのなら、彼がフラウに対して行っていた事、それを忘れていないはずで、それなら関係を持つのもおかしな話しだ…みたいな事を言いたいのか。
まぁわからなくはない。
エルンと同じ立場なら、私だって同じことを聞くだろう。
「と聞いてみたものの、だからこそ…だよねぇ」
「・・・」
「私が覚えていなかったからこそ、自分で答えを求めた結果、彼と行動を共にする事になった」
「だいたいは…」
「うん。積極的に動いて感心出来るけど、同時にその行動力が心配になるなぁ」
「反省はしてるわ。エルンは記憶を戻せているみたいだから、今後はあなたに相談するようにしようと思う」
---[11]---
「そう動いてくれると嬉しいねぇ。・・・と、フェリ君の行動力の結果…彼と会い、行動を共にするようになったのはわかった。でもその理由は? 行動した…見つけた…そこまではわかるけど、どういう経緯で行動を共にする事になったのかなぁ? 記憶があるのなら、尚更、言い方は悪いけど殺人者として、その目に映るのが普通だと思う。捕まえる事はしても、行動を共にする理由にはならない」
「それは…その…」
ごもっともだ。
ヴァージットの中身、利永の存在が無ければ、私だってその首を掴んで軍へと連れていくだろう。
悪魔に襲われていたから…なんて理由じゃ弱い。
それなら安全と思える場所で匿う…それこそ軍に連れていく方向で事が進むはず、一緒に協力して悪魔を倒そう…にはならないだろう。
---[12]---
でも、そこをどう説明しろと言うの?
この世界ではない現実世界の話をしたとして、話が通じるとは到底思えないのだけど。
「はぁ…、エルさん、大事な話ですから、フェリスさんをからかうのはそのくらいにしてください」
「・・・あはは…」
小さく溜息をついたトフラが痺れを切らして、隣に座るエルンの横腹を肘で小突く。
その仕草に、普段真面目で大人な印象のトフラとは違った印象を持ち、そこから2人の中の良さを感じつつも、エルンの笑う姿が区切りとして、その後の真面目な表情に、自然と身が引き締まる。
---[13]---
「・・・さっき、私情…と言ったけど、正確にはそれだけじゃない。私情が絡んでいる事は確かにそうだけど、あまり公に話の出来る事ではないというのが正直な所でねぇ~。今までの話だけなら、別に施設の方でもできる内容だ。でもここからは、ちょっと踏み込む。君達も口にしにくい内容だと思うしね。だからこそ、人の目ができるだけ少ない場所で話がしたかった。案の定、フェリ君は私の質問に対して答えづらそうにしていたからねぇ。案外、君は顔に出やすいのかな?」
「え…」
そんなつもりは…と言うかそうなっているつもりは全くなかったけど、まぁすぐに質問に返せなかったからこそか。
「フェリ君が顔に出やすい性格なのか…、それとも、「フェリ君ではない誰か」…が顔に出やすいのか?」
「・・・ッ!?」
---[14]---
小さく深呼吸をする間を置いて発せられたエルンの言葉に、私の背筋をゾクッと嫌なモノが伝った。
「…それは…どういう…」
平静を保とうとしても、それができていない事を、おぼつかない口が証明する。
ヴァージットの事を言えたものではないな、きっと今の私も緊張から出た脂汗が額を光らせている事だろう。
「私は…私…フェリスだ。エルンも、そ…そう言ったでしょ?」
「うん、まぁそうなんだけどねぇ~」
もし、エルンが悪魔と何らかの繋がりがあったら…。
もし、フラウのように悪魔のような何かに…操られていたら…。
不安が不安を煽り、恐怖と言う窯に火を投げ込んでいく…。
私を、夢を見る存在だと知っているのは、ヴァージットだけのはず、それ以外でソレを知っているのは…。
---[15]---
悪魔…。
「別に悪いようにするつもりはないんだけど、フェリ君…、私達は君の敵ではないよ。だから剣に手を伸ばそうとするのはやめてくれないかなぁ~、怖いよ」
「ん…」
机の上に置いた白い剣へと伸ばしていた手がビクッと跳ねる。
ばれないと思っていた訳じゃないけど、エルンの言葉にそれだけ反応する程度に、自分が動揺していた…。
「エルさん、余裕が無いのはわかりますが、あなたももう少し落ち着いてください」
「う…う~む…。わかっているつもりではあるんだけどなぁ~。ドタバタした流れに自分の急く気持ち…、私もまだまだ未熟みたいだねぇ~」
「・・・」
---[16]---
落ち着け…。
落ち着け、私…。
エルンは敵じゃない…、敵じゃないはずだ…。
悪魔と戦う直前、軍に向かっている時、エルンの話の中で、現実をにおわせる話は出ていた。
多くはない…少ない情報、この世界にはないとさえ思える味と言う概念の話が出ていたはずだ。
彼女を除いて、周りの人間からその辺の話が出てきた事はない。
現実と違って味に対しての関心がないからこそ知っていても話に出てこないのか、それに特別な意味があるのか、単純に単語としては存在していて私が知りえていないだけか…。
私の疑問を吹っ飛ばす可能性は多くある。
---[17]---
そもそも敵であるなら、どうにでもなるだろう。
ヴァージットは戦力外だし、私だけでどうこうする事なんてできない。
その上でやらないというのなら、それは敵意なんて無いって事だ。
そもそも、2人からそんなモノ感じないし…。
私の考え過ぎだ…。
「フェリスさん、どうかエルさんを許してあげてください。彼女も戸惑っているのです。別にあなたを攻めるつもりで、言っている訳ではありません」
「…はい」
こちらもどう返していけばいいのかわからない。
2人に悪意が無いのなら、私はただ牙をむかないだけだ。
「エルさんがあなたに言い続けてきた通り、あなたはあなた、他の誰でもないフェリス・リータであり、隣に座るヴァージットさんも、ヴァージットさんである事に変わりはありません」
---[18]---
「正直な所、そちらの意図が分からない…。結局何が言いたいの?」
「私達としても、どう話せばいいのか…。難しいのですが、聞きたい事は、あなたは確かにフェリスさんですが、もう1つ、顔を持っていますよね? 私達はそれを確認したいのです」
「・・・」
もう一つの顔…。
この体も、声も、無意識のうちに変わってしまう口調も…、それがフェリス・リータとしての顔…存在であるなら、確かに俺としての人格はもう1つの顔と言えるだろう。
「夢…」
エルンの小さくつぶやかれたその言葉、単語に、私の体はビクッと跳ねる。
「眠れば現実で目が覚めて…、そして現実で眠りにつけば夢を見る。この世界の、現実としか思えない夢を…」
---[19]---
「・・・それは…」
悪魔ないしは現実で繋がりがあるかどうか確証はない…なんて台詞は、もう言うタイミングを完全に逃している。
否定的な考えで物事を否定すべきか、前向きな考えで…、このエルン達との会話に向き合っていけばいいのか。
悪魔とのいざこざの件で話をするのだと身構えていた私にとっては、完全に意識外からの接触、後頭部に飛んできた攻撃に等しい。
ノーガードで挑むには、重すぎる話だ。
でもこの話、エルン達が現実について何か知っている事は確定か。
悪魔との繋がりを無いモノとして考えて、後は単純に現実の事を知っているのか、それとも現実の人間なのか…。
---[20]---
私以外に現実の人間がこの世界にいる事はわかっているんだ。
その第三者との接触に成功しているのなら、この世界の住人だって、現実の事を知っていてもおかしくない。
いや…、私やヴァージットと同じ、現実の住人であるなら、悪魔との繋がりは確実か?
なら、敵である可能性も…。
「まぁ、全く心当たりのない質問をされて困惑している…みたいな反応じゃないし、私達が聞きたい事は、聞かずとも見て取れる…かなぁ~」
エルンは席を立ち、グッと伸びをしてやりきったかのような表情を見せる。
「回りくどい言い方をしてごめんねぇ。本題から入っても、警戒心が強ければ否定されるだけだと思ったから」
これで終わりか?
---[21]---
聞きたい事、それを見て取れたからいい?
私が俺である事、夢と現実、そのつながりがあるかどうか、それを知りたかっただけと?
「・・・、それを確認するために一芝居を打ったと?」
「芝居? いや、アレは素だよ? 直接的な質問を禁止したとして、だったらどう聞くべきか、正直わからなかった。こういう事は初めてだったからね」
「初めて?」
「そう。君達みたいな人に探りを入れながら話を聞くのが初めて」
「・・・」
どう言葉を繋げればいいか…、それが分からない。
現実との繋がりを隠す前提で話をしようとするからこそ、余計にその色が濃くなって、自分から出せる言葉が限定される。
---[22]---
私も…、もう…隠す必要もない…か…。
「1つ聞かせて。エルン達は…どこまで知っているの?」
「これはまたざっくりとした質問だなぁ~。何処まで…か。とりあえず、君達の言う夢と現実、その事を私達は知ってる。そして今はっきりした事、君ら2人はここの住人であってそうではない。この前、倒した悪魔はただの悪魔ではなく、ここと君達の現実を繋げる存在である事」
「・・・」
「他に聞きたい事は? フェリ君たちは混乱と言うか、困惑…しているだろうし、出来る限り質問に答えるよぉ~」
「じゃあもう1つ…、あなた達はどちらの住人…なの?」
お互い探り探りの話し合い…。
今まで築いていたと思っていたモノが…、足元が…、グラグラと揺れ動いているようなそんな不安。
---[23]---
現実の事を知っている…ただそれだけの事が、とても大きくて、私を不安にさせた。
自分がしっかりしなければいけない…。
ヴァージットには悪いが、あまり頼りにできるとも思えないから、そんな気持ちばかりが先行しているように思う。
「私もトフラさんもこちらの住人だ。・・・こちら…つまりは天人界…君達の言う夢の世界、生まれも育ちもこちらの住人」
「そう…」
俺達と同じ現実の人間だったら、ヴァージットのように現実で会って確認するような事も出来ただろうけど、夢の住人ならそれもできない…か。
「まぁ今日の所はこの辺でやめておこうか」
「・・・でも、まだ悪魔の問題に関しての話とか、出来てないと思うけど」
---[24]---
「そうだけど…。正直、ただの悪魔討伐って訳じゃないからねぇ~。戦いました…倒しました…はもうはっきりしている事だし、知りたいのはその中身であり、君と彼と悪魔の関係だ。さっきも話したけど、彼の行いを考えれば、一緒に行動するなんて事、起こる訳がない。悪魔の影響かにあったのなら尚更。協力関係になるのは危険が大きすぎる。それとも彼は誰でも虜にするような話術でも持っていたかなぁ? それなら今この瞬間でも私を言いくるめて都合よく話を進めればいいけど、その様子もない。やれない理由があるのか、そもそもできないのか。とまぁ色々考えうる事はあるけど、ピンとこないんだよねぇ~。一番しっくり来る可能性が、君達の現実での繋がりだ。半信半疑、結局はソレも可能性の1つでしかなかったけど、どうやらその線で正解みたいだねぇ」
真面目に事に当たるエルンは頼もしいけど、敵か味方か、はっきりしていないような不安の残る状態だと、その力が怖く思える。
---[25]---
「話が長いです、エルさん」
「んぐ…」
「今までの話を要約するとですね。嘘か真か、お二人はこの世界の住人であり、そうではない存在、その条件が加わってしまうと、聞きたい事…協力関係になった理由の全容を見る事がこの場だけで不可能なのです。少なくとも、お互いに疑問があり、片方だけだとしても信用の欠けている状態では…」
「信用…か…」
それで行くなら、現状、この話を終わりに向けて進める事は不可能だろう。
「私は、フェリ君を信じたい。君の言っている事は真実だとね」
「私もです、フェリスさん」
「・・・、その言葉は嬉しいけど、信じてくれたからって、話が解決するわけじゃない…。どうやって裏を取るつもり? それが確立できなきゃ、今だけじゃなく、今後の話にも意味がない」
---[26]---
「だからだよ、フェリ君」
「ん?」
「このお互いにできてしまった溝を埋めるためにも、次の仕事が必要なんだ」
「仕事って、一緒に行動するからって、疑問が晴れる訳じゃないでしょ?」
「そりゃ~一緒に汗を流すだけじゃ、問題解決になる訳ないよ。重要なのは仕事をする事ではなく、一緒に仕事をしに行く場所だ」
「場所?」
「そう、君達にとってはお馴染みであり、忘れる事の出来ない故郷。私達にとっては、決して太くない…細い細い繋がりのある場所…、「人間界」に…私達は行くんだ」
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