弾丸作り 前編

 カチャカチャ……ガチャコン

 カチャカチャ……ガチャコン


 王都滞在五日目。

 今日はまた工房に来ている。今日は昨日行ったトウの樹液を扱うお店に行くはずだったんだけど、どうやら熱して出してみたら割れてしまっていたみたいでさっき行ってみたらものすごく謝ってくれた。今日の夜には出来上がって届けてくれるみたいだ。でも俺は今日ずっと工房にいる予定だから宿で留守番してるルル辺りが受け取ってくれると嬉しい。


 さて、俺が今なにをしているかと言うと弾丸や薬莢の完成品の確認だ。さっきの音はまた別のやつで、防具担当の人たちがなにか工具を使ってる音な。


 薬莢もちゃんと雷管を入れる部分も作ってあるし、入れる道具も完成してるからいつでも作業開始できる。雷管はまだ中に燃石を入れてないから弾丸に仕込むことはまだ出来ないが、雷管のパーツに関してはさっき確認は終えてある。

 弾丸は鉛弾と真鍮で被覆されたフルメタルジャケットだ。他にもいくつか案はあるが今のとここの二種類だな。いわゆるホローポイントとフルメタルジャケットだ。他にもアーマーピアシングとかも作りたかったが、コストの関係で一旦見送りだ。ホローポイントに似たものでソフトポイントというのがあるが、これに関しては先端が直接鉛になっていて本来は警察とかが使うやつだ。話をホローポイントに戻すとこれは撃ち込まれた対象の内部がズタズタになるってやつだ。実際もっとズタズタに出来るやつはあるけど今はこれだけ。使い方はたくさんあるからまた今度だな。

 でもやっぱり用途によって形状が少しずつ違うから型がいくつも必要なんだよな。今回も二種類だし……はぁ。コストが嵩む。


 数はそれぞれ二百発ずつ作った。つまり薬莢は共通させてるから四百個。予備としてプラスで五十個ほど作ってるらしいから……はぁ、先が長い。


「おうヤマト、少し良いか?」


 ようやっと半分が終わった頃に親方が来た。手にはなにか金属の塊みたいのを持っている。


「こいつを見てくれ。こいつをどう思う?」


 そこには銀色のパーツで組み上げられた筒のようなものがあった。


「すごく……銀色です」


 アレだ。ああ言われたらこう答えるしかないよな?


「いや、そうじゃなくてな。あの図面とお前さんの持ってた機械弓の構造通りにパーツを作っていって、ここまで組み上げられたんだが確認してみてくれ」


 ああ、はい。

 どれどれ……

 組上がった部分、つまり装填部分なんだがその部分を確認していく。


 ボルトハンドルを上に回転させ、後ろにスライドさせて内部に弾を六発入れることが出来るが、その底には板付きのバネが付いている。

 そして俺が図面に書いたのはボルトハンドルを引くことでコッキングがされるタイプだ。このコッキングにもバネが使われていて、ロックをかけることができる。引き金を引くことで撃針のロックが外れ、弾を発射するのた。


「さすがだ親方……びっくりするくらいぴったりだ」


 何度がボルトハンドルを引いてみたりしてみて動作に異常が無いことを確認する。


 もちろん引き金も引いてみる。仮のグリップが付いているからそれをしっかりと握って引く。


 カチャンッ!


 内部の撃針がバネの力で移動する音が聞こえる。


 この銃に使われるバネ、いや全体的にだが贅沢なことにミスリルがふんだんに使われている。ミスリルはまるでステンレスのような性質を持ち合わせていて、バネなどにするには最適だったのだ。だから実際武具のためなら惜しむ必要も無いから使ってもらっている。そもそも異世界にバネという概念があるのか心配だったが、馬車などにも使われているとのこと。何度も馬車には乗っていたけど気づかなかったな。バネ付きは貴族とかが乗れるのだろうか。


「あとは銃身とかを組み上げてみて実際に撃ってみないとわからないけどこれは完璧だな。そういや、あの骨はどうなった?」


「ああ、あれか。あれは今別のヤツがやってるぜ。明日か明後日には組み立てられるはずだ。エヴトの方は知らん。あいつずっと自分の工房から出てこないからな。防具に関してはあそこで作業してる連中を見てくれや」


 了解だ。さて、俺は弾の確認の続きだな。今のとこヒビが入ってたりとか先端の窪みが潰れてる以外でアウトな弾は無い。それでも十数発はあるんだけど数百発中でそれだけに抑えられてるあたり技術ってすごいって思う。




「終わったぁ……」


 朝に始めて終わったのは昼過ぎ。次からは五十個ずつとかにしよう……


「次は雷管を付けて、火薬を中に込めて、弾を嵌めて、上を閉める」


 俺は指を折って数えながらうんざりする。もうめんどうだから弾を嵌める工具だけ魔法袋に入れて宿に帰ってやろうかな。



「すいませーん、この工具ってもう完成してます?」


 俺は弾嵌め用の工具を制作してる五班の元にやってきた。


「あ、ヤマトさん。これですか?さっき完成しましたよ。まだ動かしてませんけどね」


 まあそうだよな。これを使うための弾が無いんだから。まあ完成してるなら貰っていこう。ちゃんと代金とかは全て終わったら払うよ。既にある程度の金額はわかってるから準備はしてあるぞ。


「はい。もしなにか問題があればまた持ってきてください」


「わかった。ありがとう」


 俺は弾と薬莢の入った箱に雷管の箱、と工具を例の赤煉龍の素材を入れていた大きな魔法袋に全部入れて宿に戻るのだった。


 あ〜、腹減った。

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