魔砲完成
「さて……木材と金具は買ってこれたし、魔法陣も必要なものは完成してる……といっても試作品だけど」
あれからさらに色々調べたり、ルルと話し合ったりしてあの日から一週間が経った。
俺は魔砲製作のための材料などを買い集めたり、緑タグに上がれたために討伐依頼をメインで受けていた。
以前の採取依頼だけの時などに比べると本当に稼げるようになったと思う。この前の防具の代金もこの街で稼いだものだけで払ったのだから。
貿易都市ではキュアル草の採取依頼だけでも金貨は貰えていたが、それは結構異例らしい(群生地を見つけられたのは結構レアだったようだ)。普通は銀貨数枚だ。あとは木の実の採取依頼もあったがそれは銀貨を貰えるかも怪しい。となるとやはり実入りが良いのは討伐依頼になる訳で、既に金貨はかなり稼げている。
そんなわけで購入した木材は少し高めの硬く熱にも強いカロ木と呼ばれる物を使用。金具は普通に売ってる銅や鉄製のものだ。
そして木を加工場に持っていき長さは設計そのままの一メールのまま太さは四セール位の角材に加工してもらう。
出来上がった角材は四本なので片面に縦横二十セール程の板を置いて四隅に角材を打ち付けて固定する。形としてはちょっと変なテーブルに見える。
そしてそれぞれの角材同士も外側に板を張って固定する。中に魔法陣を入れるからな。だがこれでは魔法陣は入らない。板に書いたとしても大きすぎて中に入らないからだ。
まともに書いたならばの話だが。
要は魔法陣として機能すれば良いのだ。
俺はいくつか実験をした。魔法陣は形が変わっても機能するのかどうかだ。
結果から言えば成功した。成功した形は楕円形、ラグビーボール型に近いだろう。
重要なのは魔法陣に見えれば良いのだ。ならばただ横に引き伸ばしても成功するだろう。ただし文字の大きさは変えない。
俺は試しにこの前使った「
イメージとしては板を横並びにして、まず基本の円を楕円形に書く。あとはそれの円に合わせて魔法陣を書いていくだけだ。ただし、板と板の繋ぎ目の部分は線は伸ばすものの文字と文字の間をいくらか開けなきゃいけなかったがどうやら問題ないらしい。
形こそ楕円形になったがそれ以外は何も変わっていないのだ。ならば成功するのも道理だろう、というのがルルの見解だ。
だが、魔法陣を楕円形にするのも文字と文字の間を開けるという方法を思いついたのもルルなのだが。
そう考えるとつくづくルルはすごいと思う。俺はもっぱら製作担当なのだけどシャリアが手先がかなり器用で、俺が横で見てることの方が多くなって来ている気がするのだ。
ついさっきも手伝おうとしたらルルに邪魔だと言われてしまった。
なので俺は仕方なく部屋の隅で黙々と弾丸作りやインクの追加で調合をやっているのである。
数時間後
「ようやっと出来たね……お疲れ様」
「お疲れ様です……やっぱり肩が少し痛くなりましたね」
目の前には設計した通りの木製の物体が鎮座している。
ルルとシャリアは互いを労っている。
作業を始めてから一時間程で戦力外通告を受けた俺は何をしていたのかと言うと……
「ほら、ルルの食いたがってた角猪の香草焼きだ。肉は量があまり無くてね。少ししかないが食べてくれ」
ルル達へのご褒美のために肉を焼いていた。
今更だがこの世界に来てからは料理をする機会は減っていたが元々料理は多少嗜んでいたのだ。かつては大学の後輩やサバゲー仲間の店長など色々な人に特性カレーやバーベキューを振舞ったものだ。特に後輩にはそれなりに仲が良かったためかなり食事を作ってやっていたのだが……今はちゃんとやれているだろうか?
この世界に来てからは唯一の心配事と言ってもいいだろう。向こうでは何年経っているのかとか色々気になるが……俺の親?……今はいいだろう。
閑話休題。
「ねえねえヤマト!このお肉とっても美味しいよ!それになんかいつもの違う気がするの!」
ルルは机をバンバン叩いて美味しさを表現している。
「本当ですね。ヤマトさんって料理も美味かったんですね」
シャリアはその尻尾を左右に振って美味しさを表現してくれている。
あの尻尾まだ触ったことが無いのだが……すっごいフワフワっぽくていつか触ってみたいものだ。あとルル、いい加減うるさいから机を叩くのはやめなさい。
「今回の肉はこの街で手に入れた岩塩とハーブを使って焼いたんだ。時間はあまり掛けられなかったから塩とかを揉みこんで寝かすことは出来なかったがよく出来たと思う。美味しいなら何よりだな」
俺はこの街の岩塩とハーブ、それに貿易都市にいた頃に手に入れたハーブを混ぜてみたのだ。いくらか試行錯誤してなかなか美味しい物が出来るまで苦労したが……俺的には満足だ。だって何しろ……肉に掛ければ美味しくなること間違いなしのクレイ○ーソルトが完成したのだから。まああくまでももどきだが。それでもかつてのお気に入り調味料が手に入ったことは大きい。
貿易都市では塩は貴重で岩塩も手に入らなかったのだ。代わりに小麦がかなりの安さで向こうでは手に入ったのだが。
でもこの街では小麦が高い代わりにハーブがいくつも見つかったからスパイスが育つであろう南方に行けばもしかしたらカレーが再現出来るんじゃないかという淡い期待もある。
それはさておき、ようやく魔砲が完成したのだ。早速使ってみたいのは当然だろう。
シャリアから魔法陣のことを聞いてからずっとやってみたいと思っていたのだ。まともに魔法が使えない俺だが魔法陣があればかなりのことが出来るようになるのだから。この魔砲はその一つだ。
「じゃあ早速これを試射してみようか。今なら夕食頃までには帰ってこられるだろうし」
俺の言葉に二人は頷くと俺達は街の外の草原に向かうために準備を始めるのだった。
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