対龍調査団
俺達が木製魔砲を持って宿から街の外へ続く門へと向かっていると門に近づくにつれて騒がしくなってきた。
まるでこの前に龍の噂を聞いた時のギルドのような騒がしさだ。
ただあの時と違うのは今目の前にいるのは武装した兵士やハンター達だと言うことだ。
馬車が多いが何人かは馬に乗っている。そういう人物は総じて身につけている鎧が上等な物のように見えるから恐らく位が高いのだろう。しかも周りには同じマークの付いた鎧を着た人が十数人いる。これが騎士団なのか?
騎士団はこの国だけでなく各国に存在する軍隊のようなものだ。しかし、通常の軍隊よりは位は上で順番的には一般兵<騎士団<近衛騎士団
というような形である。
一般兵はその名の通り平民出身の者が多く入る兵団だ。しかし、軍に所属する者は皆まずはここから始めてから騎士団などに推薦され昇級して行くらしい。それには民としての地位は一切関係なく、侯爵出身の者が一般兵で平民が騎士団に所属することもあったという。つまりは完全実力主義という事だな。
しかし近衛騎士団は少し違っていて、騎士団から実力によって推薦され昇級することは変わりないのだが試験として筆記や面接による精神診断など様々な分野で試験が行われるのだという。そしていくつもの試験を乗り越えた者達はこの国の王から直々に近衛騎士団に任命されるという栄誉が送られるらしい。
「そう言えばこの前ギルドで調査団が来るとか言ってなかった?もしかしてそれじゃないかな」
そう言えばそんなことも聞いたっけな……
って、ギルドで思い出したけど昇級した時言われた「パーティーを組んでみては」という話があったが結局あれは無しになった。理由は「ちょうど良いくらいのパーティーが居なかった」かららしい。ならしょうがないね。
「今日だったんだな。依頼で少し外に出る以外はずっと宿に篭ってたから知らなかったよ」
「そうなんですか?少し前からずっと皆さん言ってましたけど」
そうなのか……どうやらシャリア曰く俺が単に気づいていなかっただけのようだ。
でも俺もそれなりには人の話を聞いて情報収集してるんだけどな……それでも足りないのか。
「だってヤマトって街の掲示板とか見てないじゃない」
ルルに突っ込まれた。
でも確かに掲示板は見てない。だってどこにあるのか分からないんだもの!
え?大通りの領主館の前?行ったことないよ!というかこの街に領主って居たのね!?
この街に既に結構滞在していながらも領主の存在すらも把握していないヤマトであった。
「おい!ちゃんと食料とかは確認はしたか?ここからはそれなりに距離がある!ちゃんと各自もう一度確認しろ!──ん?ありゃあ……この街に来てたんだなぁ。おいベル!ここにヤマト達が来てるぞ!」
ベルと呼ばれた女性は背中に矢筒を背負いながらこちらへ振り向く。
「そうなの?なら挨拶ぐらいはしたいわね。あの子達元気でやってるといいんだけど」
彼女は自分の知る二人を思い出して微笑む。あの若い二人、将来有望でいつかは自分たちも追い抜いていくのだろうと思える二人。
彼女がダンの方へ向かおうとした時だった。
カーンカーンカーン
鐘が鳴り響いた。この鐘は今回の調査の出発の合図だ。
「仕方ないわね。帰ってきてから挨拶するとしましょうか。……その時居てくれればいいんだけど」
それからダンやベル達ハンターパーティー〈風の導き〉は支給された馬に乗り、この調査団の団長の号令により中間都市アールムから出発したのだった。
────────────────────────GW中はお休みしましたが、今日からまた更新再開します!
これからも【魔銃使いとお嬢様】をよろしくお願いします!
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