魔道具

「あ、そうか!この銃もそう考えると魔道具になるのか!」


 時間は夕食を食べ、部屋でくつろいでいる頃だ。


 ヤマト達は色々と今日分かったことなどを話し合っていた。


「ええ。もう少し簡単に説明すると、知っての通り魔道具は魔法を付与した道具。だけど付与エンチャントとの違いはそれが持続するかどうか。付与はあくまで武器に掛けてその持続時間はせいぜい一時間がいい所。これは熟練がやった時の時間よ。でも魔道具は半永久的に効果は持続するわ。それは掛けられてる術式にも関係はあって術式自体が魔力を集めて機能してるわけね。だからヤマトの言うように常に反動制御がされているその銃は魔道具と言っていいのよ」


 ルルはその濃い青の目を輝かせながら生き生きと説明してくれた。


 この説明でもわかりやすくしたつもりらしい。実はついさっきも同じような説明をされたのだが、それはあまりにも難解でよく分からなかったのだ。魔法士特有の感覚というやつだろうか。


 とにかく、俺は自分の銃が魔道具の一種であり、魔道具と付与の定義が分かったため、以前からやろうとしていたことに手を出すことにした。

 ルルがいつの間にかシャリアにも見せていたようだが、魔法陣を用いた高火力魔法。つまりは魔砲だ。


 構造としては大まかなフレームは木製の縦横二十セール、長さが一メール程度の直方体で、重要な部分は金属で補強した物だ。

 中には魔法陣を刻んだ木の板か金属の板を固定して、シャリアが見せた魔法陣の起動板による発動を使って本体の先端から魔法を、いや魔砲を発射するのだ。


 単純だがそれゆえに強力な魔法を仕込める武器になるはずだ。


 仕込む魔法は火系統の魔法で、前方に発射するが火炎放射器という感じのものではなく、個人的にはビーム砲に近いような気はする。

 イメージとしては一直線に敵へ向けて進む炎の柱だ。


 術式的には……「炎竜巻フランマ・トゥルボ」を元にしたいと思っている。

 この魔法は炎系の魔法を使う魔法士にとっては結構ポピュラーな魔法で使い勝手も良いため、ハンターが多数の魔物、風狼ウィンドウルフなどの群れる魔物を討伐する時に多く使われている。


「で、術式自体はこれで完成で良いの?」


 ルルが俺の説明を聞いて質問してくる。

 紙に書いた魔法陣はあくまでも試作のつもりでいたから完成とは思ってなかったんだが……

 

 とまあここまでやってきたが何故この魔砲と魔道具の定義が繋がるのか。そこが重要だ。

 魔砲で放つ魔法は中に設置する木の板等に魔法陣を刻み込むことで発動させる。その魔法は炎竜巻だ。だがそれでは純粋に魔法陣で発動させたのと同じだ。ならば何故魔砲とするのか。

 それは内部に置く魔石があるからだ。

 ルルは分かっていたようだが俺は杖に取り付けている魔石をモデルにこの魔砲を作る。

 

 杖に付いている魔石は使用者の魔力とイメージを元に魔法を発動させるためのサポートを行う。

 現状、世界的な常識としては

「魔法を使用するには道具は何も必要無い。必要なのはその身体と知識のみだ。魔石を嵌めた杖は魔イメージを伝え、魔力を制御し易くして放出する単なる補助道具に過ぎない」ということらしい。


 つまり、魔力を制御し、放出する補助道具ならばことも可能なはずだ。


 そこで俺は考えた。「魔法陣で魔法を発動させるならば魔石にイメージは必要無い。ただ魔力を制御して放出、つまり送り込む装置として機能させれば良い」と。


 ……まとめると、


①魔力を魔石に送り続ける魔法陣を起動させる。


 さすがに起動だけは自前の魔力を使わなければならないが、それは仕方ないだろう。どんな魔道具だって起動は全て自分の魔力なのだから。


 閑話休題。

 ここで使う魔法陣がなかなか特殊である。そもそも魔力を送り続ける魔法陣なんて知らないのだから。使用する魔法が分かっていればルルに書き出して貰うことも出来るのだが……


 その魔法がついに判明したのだ!

 色々資料を探していたのはこの魔法を探すためだった。

 いくらか古い本だったが、魔道具に使われている魔法で灯りの魔道具に使われていた魔法らしい。

 丁度今付けている灯りの魔道具は「灯り《ライト》」の魔法が掛けられた魔道具だが、以前は件の魔法で魔力を送り出して断続的に光らせるいわばコマ送りのように光る魔道具だったようだ。


 さて、話を戻すが

②送り出された魔力を内部に貯める。


 これは単純に「魔力溜チャージ」の魔法を用いて貯めることになる。この魔法は魔法を発動させるために必要な魔力を一時的に貯めることで発動する魔法の威力を上げるというものだ。

 熟練の魔法士がこの魔法を用いてから放つ魔法は一番簡単な魔法の一つ、「火球ファイアボール」が着弾後その場を燃やすはずが大爆発を起こした。と言われる程だ。

 元日本人としてはドラ○エのメ○がメラ○ーマになったと考えれば良いと納得している。


③魔力を貯めている間に発動のための魔法陣のみは構築させる。


 これは魔法陣の特性とも言える物なので割愛だ。

 あとから分かったことなのだが、起動板による発動は魔力の通りが良ければ良いほど強く光る。(つまりは魔法の発動に関係無く魔力を流せば光るようだ)

 あの時は起動板に汎用性の高い刻印をしていたが、起動板に魔法陣を描けばそのまま光り、浮かび上がるように見えるのでここはちょっとした演出になるだろう。


④起動板によって既に発動はいつでも可能になったため、チャージしていた魔力を解放。魔砲の要とも呼べる魔法陣に流し込んで魔法を発動させる。


⑤魔砲が敵に向けて発射される。


 というのが一連の流れだ。



 じゃあ……魔砲を作っていくとしますか!

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