魔砲制作計画

 魔道具について調べた結果……と言ってもこの街にあった魔道具に関する書籍はギルドの近くにあった図書館の五冊程度だったため、ほんの数時間で終わってしまった。借りるほどでもなかったので手ぶらだ。


 でも自分が知りたかったことはちゃんと調べられたのでホクホク顔のヤマトである。





 さて、場所は変わってヤマト達が泊まっている宿である。

 ヤマトより先に戻ったルルとシャリアは二人だけで今までも何度かコソコソと色々話していたのだ。


「ルルちゃんって魔法が得意なんですよね?魔法関係のスキルを持っているんですか?」


「ええ。治癒術とかだけどね。どちらかというと使える魔法属性の方が多いわね」


 その返答にシャリアは驚いた。


「そうなんですか!私が見たことあるのは……光属性の魔法がいくつかぐらいなんですけど、あとはどれぐらい使えるんですか?」


「そうね、今更だけど話しておいた方がいいわね。私が使えるのは光、水、土、木の四属性よ。普段使うのは光ばかりだけどね。水は案外使い勝手悪いのよ」


「凄いです……魔法を四属性も使えるなんて……私なんて火属性魔法が少し使える程度なのに……」


 シャリアはそう言って少し俯いて落ち込む。確かに、焚き火をつける以外で魔法を使うところを見たことがない。


「そんなに落ち込む必要はないわ。あなたには十分に戦える技術があるじゃない」


「そうですか?私、今は自分のスキルの豪脚と俊足だけで頑張ってるだけなのに……」


 ルル自身、シャリアの持つスキルを今初めて聞いた。本来ならばパーティーを組んですぐに聞くべきものだ。これは彼女の失敗としてこれからも活かせることだろう。


 ルルはシャリアの落ち込んだ様子を見かねて励ます。


「ならばそれを活かせば良いのよ。それにあなたには魔法陣というものを持っているでしょう?」


 それを聞いたシャリアが顔を上げこちらを見る。


「魔法陣……ですか?」


「ええ、ならば少しこれを見て」


 そう言ってルルが差し出したのは数枚の紙だ。そこには色々と書かれているがシャリアには何が描かれているのか一目で分かった。


「これって、魔法陣ですよね。誰が描いたんですか?」


 シャリアの目は未だにその紙に釘付けだ。解読をしているのだ。


 見る限り、書かれたのは最近だ。それも昨日、一昨日ぐらいの近さで。

 内容は恐らく火属性系統の魔法だろう。


「そんなの一人しか居ないわよ。最近ずっとコソコソ夜中にやってると思ったらこんなの描いてたのよ。少し読んだときは正気を疑ったけどね」


 ルルの言うように解読していけばして行くほどこの魔法陣の異常さが分かってくる。

 

 まず魔力の供給と制御だが、魔力はどうやら周囲から強引に持ってくるようだ。そしてまず第一の異常な点だが……


「魔力の制御をどうするつもりなんでしょうか……これじゃあ魔法陣を発動出来ませんよ」


 そう言ったシャリアに対してルルは笑って答える。


「本当よね。でもヤマトに聞いたら納得できたわ。どうやらそこは魔石を使う予定らしいのよ」


 ルルの言葉にシャリアは首を傾げる。


 魔石とは魔物の中に生成される結晶状の物質で、魔物の系統によって色も変わってくるというものだ。本来は魔法を発動させる触媒になったりするが、質のいいものは魔法や魔力制御の端末になったりもするため、案外使い勝手の良いものだ。


 ということはつまり……


「魔石に魔力の制御をやらせるつもりですか……!?」


「みたいね。でも実際私の杖だって魔石で魔力の制御はやってるから不可能ではないわ。なんかね……ヤマトに言わせると、〈魔砲制作計画〉らしいわ」


「魔砲……ですか」


 シャリアが色々と戸惑っていたそのころ、ヤマトは街の図書館からホクホク顔になって出てきたのだった。


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