昇格
「あ、あの!皆さんに伝えなきゃいけないことがあるんです!」
受付嬢さんが気まずい空気を払おうと声を上げる。
「伝えなきゃいけないこと?指名依頼でも来たんですか?」
まさか。俺達はまだハンターになってから一年くらいだ。それにパーティーすら組んでないのに指名依頼なんて来るわけがない。
ルルがそう聞いたのは冗談交じりだろう。
「えっと、依頼ではないです。ヤマトさん、ルルさん。目出度くお二人の昇格が決定致しました」
昇格?
一瞬何を言われたのかがよく分からなかった。
でも少し考えて思い至る。
「ああ。タグの昇格ですか」
「ええ。というかそれ以外無いと思うのですが……まあ良いでしょう。お二人は黄色タグから緑タグへと昇格ですので、タグを渡して頂けませんでしょうか?」
そう言われ、俺とルルはタグを首に付けている紐から外して渡す。
「ありがとうございます。少々お待ちくださいね」
そう言って受付嬢さんはカウンターの奥へと行った。
「ようやく昇格か〜、意外と短かったね?」
「そうだな……でもようやくちゃんと討伐依頼を受けることが出来るな」
「ほんとだね」
今まで貿易都市でも角猪などの討伐依頼を受けていたがあれは例外である。あの依頼はハンター初心者の依頼として白タグから受けられるようになっていて、良い小遣い稼ぎになっている。
他にも剛体蜥蜴を狩った時に受けていた鮮血山羊の依頼は一種の特例で受けれていたようなものだ。当時は依頼を受ける度に角猪を狩っていたため、緑タグにならないと受けれない一般の討伐依頼を受けれていたのだ。
しかし、ここ中間都市ではそれは通用しないので、俺らの中で唯一の緑タグのシャリアにいつも依頼を受けてもらっていたのだ。つまり俺らは付き添い扱いでいた訳だが……ようやく討伐依頼をまともに受けれる資格を得たという訳だ。
「うわあ!おめでとうございます!これでみんなお揃いですね!」
シャリアはとても嬉しそうに笑顔を見せる。
「お待たせしました。お二人はは今日から緑タグです。なので討伐依頼を受けることが出来ます。討伐依頼についての説明は……いります?」
先程まで付けていた黄色のタグから変わり、緑色のタグを渡される。大きさはドッグタグ程度の大きさだ。
「大丈夫よ。今までに何度も受けてるし」
「分かりました。ところで……皆さんはパーティーは組まれないんですか?」
パーティー?
ああ、ハンターの集まりのことか。今まではルルと二人で最近ようやくシャリアと組んで三人になったばかりだからそこら辺の常識を忘れていたな。
ハンターは基本的には最低六人のパーティーを組んで行動する。四人などのパーティーもあるが、それは初心者でメンバーが集まらないか、自分達の実力に自信があるかだ。ソロなんてもってのほかだ。
そもそもゴブリンなどはともかく、オーガなどはパーティーでの討伐が前提だ。俺らが今まで狩っていた
「うーん、まだ組む予定は無いのだけど……」
すると、受付嬢は驚きの顔を浮かべる。
「そんな!ルルさん達は死ぬつもりですか!?悪いことは言いません。できるだけ早くパーティーを組んで活動すべきです。とにかくまずは一度パーティーを組んで見てください。手配はしておきますから。そうですね……とりあえず明日と明後日に来てください」
「はぁ……分かったわ。じゃあよろしくね」
「はい。おまかせください」
すると、ルルは俺たちに振り替える。
「さて、今日は防具の受け取りの日よ。さっそくあの鍛冶屋に行くわよ!」
そう言ってルルは気分良さげに進んでいくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます