第2話 教員の生徒いじめについて
「カエル先生、」
「あ、マチコ先生。どうしました?」
「先生のクラスの、なんていいましたっけ、あの生徒、ほらあのメガネのデブ。」
「ああ、ホウサクですか? どうかしましたか?」
「そうそう、左門ホウサク。あの子いったいなんなんですか?」
「はあ。」
「私の授業でまた寝てたんですよ。」
「はあ。」
「なんとか言ってやってください!」
「はあ。」
というような会話が日本中の学校の職員室で、今日も交わされているに違いない。
でも、きっと左門は両親を亡くし五人の弟妹と一緒に親戚の家にお世話になっているので、バイトやら家事やらでつらい日々を過ごしているだろうから、俺は何にも言えないのだ。それどころか、左門を目の前にしたら、きっと、「お前はよくやってるよ。」と言ってしまうと思う。
そんな個人的なことをいちいち気にしていたら、他の生徒の手前、示しがつかないだろう!と俺より10歳は若い働き盛りでベテランのティーチャーたちがプンプンしちゃうと思う。
確かに一人一人の子どもたちの背景や資質について考えをめぐらせて言葉をかけるなんてことはちょーめんどくさいし、難しいことなんだろうと思う。
学校とは全然関係ないところで教師の知らない苦労を抱えているA子ちゃんが、教師の何気ないひとことで深く傷ついたりすることは、まあ、あるだろう。そして教師は言い訳をするだろう。若干キレ気味で。
「同じことを隣のクラスのB子にも言ったけど、全然平気だったけどなあ。A子のメンタルが弱すぎるんですよ。まったく。プンプン。」
うん。でも、あなたはそういうめんどくさいことを職業に選んだんだよね?ひとりひとりの生徒と人間関係をつくって、その距離感をいつも考えながら言葉を選んで育てていくっていうめんどくさいことを、わざわざ仕事にしたんだよね?
それは、そのめんどくささは、まるで旧世代のRPGみたいで面白いと思わない?しかもこのゲームは本当に思い通りにならない。その思い通りにいかない感じもマジでシビれる。
教員という仕事は、常に子どもの味方でなきゃいけないと、このごろつくづく思うんだ。俺。
子どもが嫌いでも、弱い人間が嫌いでも、自分以外の人間に興味が無くてもね。
カエル先生のひとりごと 三日月次郎 @flustern
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