第3話異世界転移の現実
『この世界にやってきて五日目』
オレはロリ剣士チィルール以外の人間と未だ会ったことがない。
朝から晩までひたすら森の中を彷徨い歩いている。
気分は原始人。
腹が減った。
だが食料は昨日で尽きた。
今日も森から出られそうにない。
そこでオレはチィルールに提案して、まずは食料を確保することにした。
とはいえ、知らない。オレは異世界の食べ物のこと知らない。
いやたとえ現実世界でも、どのキノコが食べれるかなんて分からない。
チィルールも知らなかった。
お嬢様らしい彼女は料理がどんな材料から出来ているかすら知らないとのことだ。
まだ子供だし、仕方ないかと思ったら、歳は十六とか嘘みたいなことを言ってくれた。
小学生にしか見えないのにオレとそう違わないみたいだ。
だがある意味よかった。
同い年位の女の子と一緒に過ごすって、ねぇ?
自信がないところだったわ。
でも、おかげで助かった。
色気なしより、食い気だ!
でもキノコや木の実は毒のリスクがあるので諦めた。
川があった。
魚採りに変更。
だが竿も網もモリも無かった。
都会育ちのオレにそれら無く魚を獲る手段など分からなかった。
川に入って魚に向かって手を突っ込んでも簡単にかわされた。
足が冷たいし、手もかじかんだ。
無理だ。諦めた。
よし狩りをしよう。
幸い(?)原生林なので小動物はよく見かける。
落とし穴を掘って獲物をそこへ追い込んだ。
これは成功した。
やった、飯だ、と喜んだが……
穴の中で怯えて、目を潤ませている小動物をどうする?
チィルールに剣で一気に、と頼んだが断固拒否された。
それに殺してもらえたとしても解体しなくちゃだし――諦めた。
獲物は逃がしてやった。
結論、現代人にサバイバルは無理。
今日一日で理解した答えだった。
『この世界にやってきて六日目』
腹が減った。
魔物が食えたらなぁ
あいつら倒すと霧になって消えやがる。
その際、チィルールは証明書の紙を霧の中に突っ込んでいた。
それで魔物退治の証明になり、染み付いたシミの(濃さ?)で賞金が貰えるらしい。
だが今はお金より食料が欲しい。
もってないけど一億円払うからハンバーガーください。
それにしても。
腹が減った。
腹が減った。
腹が減った。
腹が減った。
腹が減った。
腹が減った。
腹が減った。
腹が減った。
腹が減った。
腹が減った。
腹が減った。
腹が減った。
腹が減った。
腹が減った。
腹が減った。
『この世界にやってきて七日目』
なんてこの世界は素晴らしいのだろう。
すべてはこんなにも輝いて、七色の光が天から降り注いで……
オレとチィルールは手を繋ぎ、スキップしながら森を進んでいた。
二人とも美味しそうにキノコを頬張っている。
よだれが口から溢れている。
オシッコも漏れてる。
オオオオ
アをおおオオ
オホおおおうぅ
おうぉおお
うあぁオオ
ひっははは
ふおほおおほ
うひひはあは
るひひヒヒヒ
『この世界にやってきて八日目』
気付いたらオレはチィルールをオンブして歩いてた。
話しかけても返事はない。
身動き一つ無い。
生きているかどうかも怪しい。
だが捨てようとは思わなかった。
一週間、寝食をともにし、協力して敵と戦い、生き抜いてきた戦友だ。
もはや、わが身の一部である。
どこへでも向かう。
行ってやる。
パパ、がんばるからね。
ここは遠い遠い異世界。
進んだぶんだけマッピングだろ?
全部開いてやらぁ。
見せてみろ。
この世界見せてみろ。
制覇してやる。
糞ファンタジー
『この世界にやってきて九日目』
……
……
……
……
……
……
……
……
『この世界にやってきて――』
「タロー! タロー!」
なんか声が聞こえた。
誰かが犬でも呼んでる?
にしては真剣味が……
「タロー!」
「はあ? 誰がタローだ?」
「タロー?」
チィルールの声だ。
オレは意識を取り戻した。
「チィルール? お前、生きてたんか?」
「ばかモノ! それはこっちの台詞だ!」
え?
なんだ?
どこだここ?
異世界なのは知ってる。
だがここは?
「密林(ジャングル)じゃない」
人工的なランプの明かり。
小屋? いや大きなテントだ。
そして人の作った布の温かみがオレを包んでる。
ああ、オレは今、文明の中にいる。
こんなにうれしいことは無い。
「おおおおぅううおお」
マジで泣けた。
こんなカッコのつかない感じで、タローとチィルールの冒険(遭難)はひと段落ついたのであった……
そして二人は出会うことになるのだ。
ヤツに……
謎の黒い影「ヒヒーン」
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