第119話
「ほ、ホントですか!? それ」
「嘘を言ってどうするのですか」
アルカイックスマイルを滅多に崩さないから、嘘か本当かの判断付かないんだよなぁこの人。
「まあ、ペットではなくて見世物として連れて来られたとすれば、アユザワさんのサーカス一座。という考えも、あながち間違いとは言えないですね」
一種の珍獣ですから。とルレイルさんは言う。そういえば、珍獣ショーなんてのもやってたっけ。
「おや、目覚めた様ですね」
カゴの中で、んー。と小さな体で目一杯伸びをして、大きな欠伸をする。その一つ一つが愛くるしい。これが将来は、背に乗れる程大きくなるなんて信じられない。
「ちょっと退いててね」
カゴの中から『リンクス』を出してテーブルに置き、目的の鉱物を取り出した。
「相変わらず見事なモノですね」
しげしげと眺めるルレイルさん。そんな穴があく程見つめられると、恥ずかしくって仕方がない。もし、コレはアレなんです。と、その正体を明かしたら、このアルカイックスマイルも崩れるのだろうか?
「それでは早速鑑定をさせて貰いますね」
ルレイルさんが鑑定機の台座に付いたボタンを押すと、ブウン。とした低い音と共に青白い光が鉱物全体を覆う。と、それが気になったのか、『リンクス』がひょこひょこ。と近付いて、光る鉱物に鼻をヒクヒクさせた。
「にぃ」
「ああ、コラ」
お腹を掴んで持ち上げ、そのまま膝の上に場所を移させる。ノドを撫でてやると、すぐにクルクル。と鳴らし始めて大人しくなる。そして鑑定機にふと視線を移すと、金額を表示させる部分に、やたらとゼロが並んでいた。
いち、じゅう、ひゃく、せん、まん……えっ!?
「さ、三億っ!?」
「ああ、機械の誤作動の様ですので、もう一度測定させて貰いますね」
言ってルレイルさんは、台座に付いたボタンを再び押す。平静な筈のアルカイックスマイルが揺らいだ様な気がした。
再度鑑定した結果はランクSの金鉱で価格は二十万ドロップと、通常の結果だった。あの三億ってのは一体なんだったのか……故障?
換金したお金をカード経由で銀行に振り込んで貰い、通商ギルド『アルカイック』を後にする。次に向かうは『タイヤキ船』。契約の石に封じられたモノを見て貰うのに、冒険者を生業としていて魔術師でもある彼女に会う為だ。
お祭りが始まった頃よりもだいぶ涼しくなった風が
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