第105話
己の未熟さを痛感しベッドへとダイブした直後、額に痛感を得てベッドの上を転げ回る。
「痛ったぁ……何なのよ、もう」
枕の下に手を差し込むと、コツリ。と硬い物質が触れた。引き摺り出してみると、赤に染まった鉱物。鑑定をしていないから詳しくは分からないが、ルビーと思しき鉱物だった。
「そういえば、コレがあったんだっけ……」
鑑定して売り払ってしまえば気も楽になるのだろうが、過去二回鉱物絡みで事件に巻き込まれている経緯を思えば、躊躇をしてしまう。かといって、このままにしておくのもなぁ……
滅多に産まれない……というより、もう二度と産ませたくないこの鉱物の処理法を、あーでもないこーでもない。と考えながら、夜は更けていった――
ざりざりざり。生暖かい卸し金が、私の頬を撫でている感覚に意識が覚醒する。夜が明ける直前の薄暗い室内で、赤く光る目玉を持った何かが目の前に居れば、誰しも驚くに違いない。勿論私もその例に漏れない。壁に張り付いて、床上数センチの場所から私をジッと見つめる赤い目を凝視していた。
空が白む毎に、その正体が明らかになる。ソレはネコ。によく似た獣だった。
「え……? ネコ?」
「にぃ……」
私の声に応えるかの様に鳴いた声はまさにネコ。しかも子供の様だ。
「んもう、何処から入ったのよ……」
ヒョイ。とその獣をつまみ上げて、ドアの外へと締め出した。しかし――
「にぃ……にぃ……」
カリカリカリ。ドアに爪を立てる音と共に聞こえる鳴き声に、二度寝しようとしていた私の足を止めた。
「にぃ……にぃ……」
カリカリカリ……
「にぃ……にぃ……」
カリカリカリカリ……
「にぃ……にぃ……」
カリカリカリカリカリ……
「んもうっ!」
負けた。ドアを開けると隙間をスルリと抜けて私の足に縋り付く。
「はあ……しょうがない。今日だけだからね」
抱っこしてそう言うと、ネコの様なその獣は嬉しそうに鳴いた。
二度寝から目が醒める。爆発した頭を掻き毟りながら、個室に備え付けられた白磁の器に腰を下ろす。そして、ソレをジッと見つめるモノが居た。
「ネコといえど流石に……」
パンツをグイッと引き上げて、ネコの様な獣を外へ追い出すと、再び始まるにぃにぃカリカリ。心を鬼にして瞑想を続け、独特な香りが鼻を擽る頃には、その音も聞こえなくなっている事に気付いた。
日課を済ませて部屋に戻る。ネコの様な獣はテーブルの上に置かれたままの鉱物に興味津々な様子で、しきりにてしてし。と前足でちょっかいを掛けていた――
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